顧客データベース活性化の課題を6ヵ月でクリアした「The Coffee Club」
続いて、太田氏が「人間的な企業」のありかたについて、具体例を交えながら紹介。事例として紹介したのは、オーストラリア最大のカフェフランチャイズチェーン「The Coffee Club」だ。同チェーンは1989年にブリスベンで生まれ、利用者数は年間4,000万人以上。オーストラリアのみならず、ニュージーランドなど世界9ヵ国で店舗展開を行い、オウンドメディア、ペイドメディア(デジタル広告)、アーンドメディア(Instagram、Facebook、YouTube)といったデジタル施策にも力を入れている。
一見すると堅調なビジネス展開をしているThe Coffee Clubだが、Brazeに相談が寄せられた当初は「デジタル活用についての課題を抱えていた」と太田氏は言い、こう続ける。
「実店舗でのビジネスは順調に成長していましたが、デジタル領域では複数のコミュニケーションプラットフォームやサードパーティベンダーを使用していたため 、顧客データベースの活性化に苦戦していました。顧客拡大にはロイヤルティプログラムの成長が不可欠でしたが、真のクロスチャネル体験を顧客に提供できない状況だったのです」(太田氏)
そこで同チェーンはBrazeとともにクロスチャネルでパーソナライズ施策を強化し、デジタルパフォーマンスの向上を試みた。実施した施策は、次の3点である。
1. データドリブンマーケティング
オウンドメディアの閲覧履歴や購買データ、アプリ・メール経由で配信したクーポン情報と、実店舗のPOSデータを統合。プラットフォームの垣根を取り払い、顧客に対して一貫したコミュニケーションを展開できるよう改善を図った。
2. ロイヤルティプログラムの強化
アプリやウェブサイト内でパーソナライズを強化し、利用頻度が低い顧客のエンゲージメント向上を実施。アプリの起動やウェブサイトにアクセスしたタイミングで、誕生日や特別な記念日に店舗で利用できるフリードリンククーポンを配布したり、VIPカスタマー(有料会員)限定の割引や未購入商品のレコメンドを行ったりすることで、ファン化とLTV向上を行った。
3. アプリ運用内製化と機能強化でレビュー増へ
Braze導入以降は、サードパーティベンダーに依頼していたアプリを内製化。さらなる進化を図ると同時に、アプリレビュー投稿数の増加を目指した。利用頻度の高いユーザーに対し、アプリ起動時のポップアップメッセージでレビュー投稿を促し、反応しなかった場合はメールでさらなるフォローを実施。Brazeのテクノロジーで、「アプリ内メッセージを開封したが反応しなかった人」とセグメントを適切に絞り込んだ後追いを実現している。
「いずれの施策もBrazeがジャーニーを設計し、ロイヤルティ会員からの売上は35%増、VIPカスタマーの更新コンバージョン率は62%増となっています。アプリの評価はわずか2週間で2.4から4.1に上昇し、ミレニアル世代の親や若年層のユーザーがThe Coffee Clubの顧客に占める割合も拡大しました。予想を上回るほどスピーディーに、大きな成果を得ることができています」(太田氏)
同施策を手掛けたのは、The Coffee ClubのCRM&デジタルマネージャーとApp/バックエンドエンジニアのわずか2名だと言う。ロイヤルティプログラムは構想から実行までに6ヵ月を要したものの、Brazeの設定はわずか数日で終え、スピーディーな施策展開に貢献。エンジニアリソースの確保という課題についても、Brazeがサポートした。
「この結果はThe Coffee Clubの取締役会でも大きな成功と見なされ、その後、Brazeは同チェーンがマーケティング施策を展開する上での重要なプラットフォームとして位置づけられました。今は新たな施策を実施する際に必ず『Brazeを使って何かできないか』と議題に上がると聞いています」(太田氏)