イントリックスの代表取締役社長を務めている氣賀崇と申します。昨年、私が執筆した『BtoB製造業のコミュニケーション革命 顧客接点のデジタル化がもたらす未来』(東洋経済新報社)が出版されました。本書で取り上げたのが、技術開発に比重を置く“口下手な”日本の製造業に必要なデジタルコミュニケーションです。オンライン上でも自社や商品の訴求を積極的に行えば、埋もれていた価値が世界でより評価されると解説しました。
実は日本では、製造業のみならず、BtoB全体において、しっかり情報発信するという基本がまだ不十分です。その一方、一歩先を行くBtoB企業では、情報発信のみならず取引のEC化が始まってもいます。そこで本連載では、eコマースがBtoBビジネスにもたらすインパクトを考察し、各社がどう取り組んでいくべきなのかを考えます。
着実な広がりを見せるBtoB-EC その2つの形態とは?
私たちにとって、Amazonや楽天市場のない生活はもはや考えられません。商品情報を探すだけではなく、そのままオンライン上で購入できるほうが便利だからです。
購入者にとってのECサイトの利点は、
- いつでもどこでも商品を入手できる
- 豊富な選択肢から選べる
- レビューや価格、仕様など、多様な切り口で探せる
- 比較が簡単にできる
- 移動や待ち時間が不要で、時間を大幅に節約できる
- 好みに合った商品を提案してもらえる
ことにあります。
人は選択肢が多くなるとストレスを感じ、決断力が低下します。ところが、ECサイトなら、多くの選択肢があってもストレスなく最適な商品を見つけられる仕組みを提供できます。
この利便性を、BtoCだけにとどめておく理由はありません。むしろ、商品数が多く実店舗が少ないBtoBでは、BtoC以上にeコマースの恩恵を受けられるはずです。事実、MRO(副資材)を取り扱うモノタロウやアスクル、製造現場を支えるトラスコ中山やミスミといった企業は、大きな成果を上げています。電子部品領域でも、メーカーが自社ECサイトを運営するケースが増えてきました。
BtoB-ECには、大きく2種類あります。一つは、様々なメーカーの商品を扱うECポータル。モノタロウ、アスクル、トラスコ中山、ミスミ、アズワンなどがこれにあたります。マーケットプレイスやモールとも呼ばれます。
そしてもう一つが、メーカーが自社商品を販売する自社ECサイトです。オムロンやTexas Instrumentsといった電子部品メーカー、金属部品メーカー、建材メーカーなどが、自社ECサイトを持つBtoBの代表的な業種です。
これらの中に、自社と同じ、もしくは似た領域の企業があるのではないでしょうか。