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既に多くの企業が越境ECに参入 いまいち盛り上がりきらない理由とは?
日本貿易振興機構(以下、JETRO)が、EC販売を展開中(または検討中)の事業者を対象に行った2023年度のアンケート調査があります。その結果によると、国内向けに既に実施している企業は74.0%、海外向けは53.6%でした。この数字をもとに、私が「日本国内向けのみ」「両方」「海外向けのみ」に分けて計算してみたところ、それぞれ46.4%、26.0%、27.6%となっています。
また、JETROは海外向けにEC販売を展開中(または検討中)と回答した企業のみを対象に、具体的な販売方法も尋ねています。私が計算したところ、結果は「日本からの販売」との回答が68.7%、「海外拠点での販売」が32.2%、「代理店を通じた販売」が26.7%です。
いずれにしても、日本国内向けにEC販売している74.0%のうち、40%弱相当が海外向けECも同時に行っているとわかります。また、海外向けECのみが26.0%もいる点も、少々驚く結果です。

このアンケート結果について、私は少し数値が大きすぎるのでないかと見ています。EC販売を展開中(または検討中)の事業者のうち、海外向けが53.6%ということは、少なくとも10万社をゆうに超えます。さすがにそこまで多くはないはずです。とはいえ、実際に53.6%が回答していることは紛れもない事実。多少差し引いたとしても、実は相当数の企業が越境ECを実施(または検討)しているのは間違いないでしょう。
ここで「それにしては越境ECが思ったよりも盛り上がっていないのではないか」と思った人はいませんか。2022年度版のJETROのアンケート調査では「EC販売額に占める海外向けの割合」が1%以下という回答が68.1%となっています。つまり、大半の企業で越境ECは売上の寄与度が低い状態です。そのため、あまり優先度が高くないと予測できます。結果的に売上が伸びず、さらに企業として力が入らないという負のループに陥っているのでしょう。
それでも越境EC事業を展開し続けているのは、参入ハードル自体がそう高くないからだと考えられます。海外のECモールに出品すれば開発費用はかかりません。コスト面で大きな負担がないため「とりあえず続けておいて、そのうちブレイクすれば良い」程度に考えている企業が多いように思えます。
これは経営における越境ECの位置付けが明確ではない、あるいは軽いということです。しかし、この先の日本経済の成長性が不透明な中、越境ECは重要性をさらに増すといえます。一つの販路として、国内事業と同様にしっかりと成長戦略を練る必要があるのではないでしょうか。