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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

ECzine Day 2021 December レポート(AD)

わずか2名で売上35%増を達成 チャネル多様化に対応するO2O施策をコーヒーチェーン事例から学ぶ

 街に徐々に人の賑わいが戻り、実店舗での購買回復も見込まれる中、オンラインからオフラインへ顧客を誘導するO2O施策が今後の鍵を握ると言える。消費者とのコミュニケーションチャネルが多様化する現代で売上を拡大させるには、オンライン・オフライン双方で顧客をファン化し、LTVを高める仕掛けも欠かせない。2021年12月7日開催の「ECzine Day 2021 December」にて、カスタマーエンゲージメントプログラムを提供するBraze株式会社の森田恭平氏、太田潤子氏が登壇し、O2O施策で短期間に売上を35%増加させたコーヒーチェーン店の事例と、その成功の裏にあるテクノロジーを紹介した。

テクノロジー活用をしながらも「人間的な企業」であることが売上につながる

(写真左)Braze株式会社 ソリューションコンサルタント 森田恭平氏
(写真右)Braze株式会社 カスタマーオンボーディングマネージャー 太田潤子氏

 Braze(ブレイズ)は2011年にアメリカ・ニューヨークから事業を開始し、2020年7月に日本法人を設立。2021年2月より日本での営業活動をスタートさせた企業である。複数の顧客接点でリアルタイムかつ一貫性のあるコミュニケーションを実現するプラットフォームを提供し、リテール/eコマース、レストラン/フードデリバリー業界など世界1,000以上のブランドでの採用実績を持つ。とくに「モバイル経由でのエンゲージメント強化やクロスチャンネルキャンペーンなど、カスタマーエンゲージメント領域において評価が高い」と森田氏は説明する。

 大きくカテゴライズすると、BrazeはMA(マーケティングオートメーション)を提供するソリューションと考えられるが、森田氏は「一般的なMAとは、思想・機能が大きく異なる」と語る。

「一般的なMAは、マーケティング活動の自動化、つまり企業側がいかに効率よく活動するかが焦点です。一方、Brazeは企業側からの一方的なコミュニケーションではなく、より顧客の心情に沿ったコミュニケーションを重視しています。つまり、顧客が解決したい課題や好きなものを理解し、その上で次のアクションの提案をする。ユーザーが欲しいものや情報をベストなタイミング、チャネル、内容で提供する。これは、Braze創業当時からのコアとなる思想です。そのため、裏側のテクノロジーも一般的なMAとは違うものになっています」(森田氏)

 森田氏は、Brazeがコアとする考え「Human Connection(人と人との心触れ合うつながり)」を紹介し、「テクノロジーで『人間的な体験の構築』を目指している」と続ける。そして、書籍『コトラーのH2Hマーケティング 「人間中心マーケティング」の理論と実践』(KADOKAWA)の内容に触れながら、「人間的な体験」の意味をこのように説いた。

「同書籍では、『信用や誠実さに投資した企業のみが生き残る』と述べられています。当社が示す『人間的』とは、おもしろい、かわいい、かっこいいといった表層的なものではありません。自分のことを理解し、必要なタイミングで最適なメッセージを送ってくれるかどうかです。深いところまで理解していることが伝わると、顧客は『この企業はコミュニケーションするに足る相手だ』と判断し、信頼を寄せてくれます。顧客は、人間的な反応をする企業かどうかを見ているのです」(森田氏)

 ここで、森田氏はBrazeがForrester Consultingに委託して実施した調査結果を紹介。「人間的なマーケティングを展開するブランドに対して、2.1倍の人がより好きになり、ブランドへの満足度は1.9倍、購入確率は1.6倍、他者へ推薦する確率は1.8倍に上がる」と説明した。

「こうした数字からもわかるように、人間的な企業であることは確実に売上につながります。2021年、 フィリップ・コトラー氏の書籍を通じて日本国内でもこの考えが注目され始めていますが、これはBrazeが創業時から目指してきた世界です」(森田氏)

顧客データベース活性化の課題を6ヵ月でクリアした「The Coffee Club」

 続いて、太田氏が「人間的な企業」のありかたについて、具体例を交えながら紹介。事例として紹介したのは、オーストラリア最大のカフェフランチャイズチェーン「The Coffee Club」だ。同チェーンは1989年にブリスベンで生まれ、利用者数は年間4,000万人以上。オーストラリアのみならず、ニュージーランドなど世界9ヵ国で店舗展開を行い、オウンドメディア、ペイドメディア(デジタル広告)、アーンドメディア(Instagram、Facebook、YouTube)といったデジタル施策にも力を入れている。

 一見すると堅調なビジネス展開をしているThe Coffee Clubだが、Brazeに相談が寄せられた当初は「デジタル活用についての課題を抱えていた」と太田氏は言い、こう続ける。

「実店舗でのビジネスは順調に成長していましたが、デジタル領域では複数のコミュニケーションプラットフォームやサードパーティベンダーを使用していたため 、顧客データベースの活性化に苦戦していました。顧客拡大にはロイヤルティプログラムの成長が不可欠でしたが、真のクロスチャネル体験を顧客に提供できない状況だったのです」(太田氏)

 そこで同チェーンはBrazeとともにクロスチャネルでパーソナライズ施策を強化し、デジタルパフォーマンスの向上を試みた。実施した施策は、次の3点である。

1. データドリブンマーケティング

 オウンドメディアの閲覧履歴や購買データ、アプリ・メール経由で配信したクーポン情報と、実店舗のPOSデータを統合。プラットフォームの垣根を取り払い、顧客に対して一貫したコミュニケーションを展開できるよう改善を図った。

2. ロイヤルティプログラムの強化

 アプリやウェブサイト内でパーソナライズを強化し、利用頻度が低い顧客のエンゲージメント向上を実施。アプリの起動やウェブサイトにアクセスしたタイミングで、誕生日や特別な記念日に店舗で利用できるフリードリンククーポンを配布したり、VIPカスタマー(有料会員)限定の割引や未購入商品のレコメンドを行ったりすることで、ファン化とLTV向上を行った。

3. アプリ運用内製化と機能強化でレビュー増へ

 Braze導入以降は、サードパーティベンダーに依頼していたアプリを内製化。さらなる進化を図ると同時に、アプリレビュー投稿数の増加を目指した。利用頻度の高いユーザーに対し、アプリ起動時のポップアップメッセージでレビュー投稿を促し、反応しなかった場合はメールでさらなるフォローを実施。Brazeのテクノロジーで、「アプリ内メッセージを開封したが反応しなかった人」とセグメントを適切に絞り込んだ後追いを実現している。

「いずれの施策もBrazeがジャーニーを設計し、ロイヤルティ会員からの売上は35%増、VIPカスタマーの更新コンバージョン率は62%増となっています。アプリの評価はわずか2週間で2.4から4.1に上昇し、ミレニアル世代の親や若年層のユーザーがThe Coffee Clubの顧客に占める割合も拡大しました。予想を上回るほどスピーディーに、大きな成果を得ることができています」(太田氏)

 同施策を手掛けたのは、The Coffee ClubのCRM&デジタルマネージャーとApp/バックエンドエンジニアのわずか2名だと言う。ロイヤルティプログラムは構想から実行までに6ヵ月を要したものの、Brazeの設定はわずか数日で終え、スピーディーな施策展開に貢献。エンジニアリソースの確保という課題についても、Brazeがサポートした。

「この結果はThe Coffee Clubの取締役会でも大きな成功と見なされ、その後、Brazeは同チェーンがマーケティング施策を展開する上での重要なプラットフォームとして位置づけられました。今は新たな施策を実施する際に必ず『Brazeを使って何かできないか』と議題に上がると聞いています」(太田氏)

2021年のブラックフライデー・サイバーマンデーでも配信漏れや遅延なし ヒューマニティの観点で欠かせないリアルタイム性

 最後は、森田氏がBrazeの裏側にあるテクノロジーについて、デモを交えながら解説した。今回例として紹介するシナリオは、The Coffee Clubでも実施している誕生日をトリガーに顧客を店舗へ誘導するというものだ。

 シナリオは、顧客の「誕生日が1ヵ月以内」であることをきっかけに開始する。森田氏は、誕生日クーポンをiOS(アプリ)へ配信し、ユーザーが開封するか否かで次なるアクションへと分岐するシナリオを描いた。具体的には、「メッセージを開封していない場合は、さらにメールでフォロー」「開封している場合は、実店舗に近づいたタイミングで店舗誘導を行う」といった具合だ。

 こうしたシナリオの設定は、ユーザーとのコミュニケーションを描く管理画面「Brazeキャンバス」で行うことができる。基本的にはドラッグ&ドロップという直感的な操作のみで、画像やバーコードを盛り込んだリッチなメールまで作成が可能だ。

 クーポンやコンテンツ、メッセージの配信は、過去の購入状況などのデータを参照したセグメント設定や特定の顧客へのターゲティングを施すこともできる。メッセージを送信するチャネルも、もちろんiOSだけでなくAndroidのプッシュ通知やSMS/MMS、メール、Webhookを用いてLINEやMessenger、Slackなど多種多様だが、もっとも注目すべきポイントは、リアルタイムでメッセージ送信が可能な点だ。

「これは、情報のリアルタイム性を重視するBrazeの思想に基づいています。誕生日がすぎたにもかかわらず、誕生日クーポンが送られてきた、あるいは在庫切れの商品のセール案内が来たといった体験は、顧客に歓迎されません。当社はヒューマニティーの文脈で、リアルタイム性に重きを置いています。実際に、2021年のブラックフライデー、サイバーマンデーでも、数十億通ものメッセージをタイムラグや漏れなく送信した実績が存在します。スケーラビリティが高い点も強みです」(森田氏)

 森田氏は、「今回ご紹介した内容はBrazeの機能のごく一部」と前置きをした上で、「O2O施策に今後取り組む上では裏側の機能や使い勝手も成果を左右する要素となるため、The Coffee Clubの成功事例と併せて参考にしてほしい」と説明し、セッションを締めくくった。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://eczine.jp/article/detail/10734 2022/01/17 11:00

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