ロイヤル顧客とはどのような人か? 定量×定性で見つける
ブランドに愛着・信頼をもち長く利用する顧客は、一般的に“ロイヤル顧客”と呼ばれる。あなたは、どのような人が自社にとってのロイヤル顧客か、明確に定義できているだろうか。セッション冒頭で、伴氏は「ロイヤル顧客とは“意味をもって買い物をする人”」と述べた。
「購入頻度・金額が高いからといってロイヤル顧客とは限りません。『なんでも良い』と思いながら、自社商品を手に取っている可能性があります。たとえば、私はマンションの1階にあるコンビニエンスストアで頻繁に買い物をしますが、理由は単に便利だからです。それと比較すると、健康的な食品や飲料を求めてわざわざ遠くのスーパーマーケットまで行くのは、意味をもった買い物に当てはまるでしょう。これがロイヤル顧客の購買行動です」(伴氏)

「そのような行動をするロイヤル顧客を、どう見つけるのか」と疑問を抱く人もいるだろう。そこで重要となるのが“データ”だ。具体的な手法を逸見氏はこう説明する。
「まずはベースとなる基準を作らなければなりません。小売事業者であれば、ID-POSのデータから分解して考える手法があります。売上を決済が完了した人の数で割ると、一人当たりの購入単価がわかりますよね。これを基準値とします。そして、自社の会員となっている顧客に絞って購入頻度・金額を割り出すのです。その上で『平均値よりも○倍高い人がロイヤル顧客』などと定義するのがわかりやすいです」(逸見氏)
こうした定量的な数値とともに重要なのが“定性データ”だ。
「その後、意味をもった買い物、つまり同じカテゴリーの中でも良い商品を買い続けている人、同じ商品を必ず選ぶ人に着目します。彼らはこだわって買い物をしており、離脱しづらいからです」(逸見氏)
ロイヤル顧客かそうでないかによって、自社が行うべきアプローチの仕方は異なる。伴氏は「ロイヤル顧客はポテンシャルのある顧客」と補足。具体的な例を挙げ、施策の作り方のヒントを紹介した。
「眼鏡をファッションアイテムと捉え、3ヵ月に1回購入する人もいれば、視力矯正の道具として壊れるまで買い替えない人も存在します。両グループを明確にわけ、3ヵ月に1度購入するセグメントに移動するであろう人を育成するのがポイントです。全顧客に対して、一様に早いサイクルでの買い替えを提案しても効果は期待できません。定量・定性の両方からデータを分析して、アプローチ次第で購入頻度が高まる可能性がある人を見つけるのです」(伴氏)
「私がコンサルティングを行う際、『顧客のペルソナとカスタマージャーニーを書き出してください』というと、皆さん様々なパターンを作ろうとします。しかし、実際に実店舗にいる1番良い顧客のペルソナとカスタマージャーニーは一つ二つしかないはずです。その中で得た発見が、具体的なアプローチの種となります」(逸見氏)