売上の80%がEC経由 その背景には実店舗の存在
2025年1月末に発表された「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2024」。大手メーカーがランキング上位に並ぶ中、総合グランプリを受賞したのが水産品を販売する「越前かに職人 甲羅組」だ。運営元の伝食は、2011年に創業後、14年で年商130億円超に成長している。創業当時は5人だった従業員数は約250人にまで増えた。
同社立ち上げの発起人・田辺氏は、福井県敦賀市の別の水産品メーカーで働いていたという。前職の主力事業が対面販売、飲食店運営の中、ECモールが台頭し始めた2000年頃に同氏一人でEC販売を始めた。
「EC売上は順調に伸び、いつしか実店舗を超えるようになりました。それでも、やはり既存販路で安定した収益源である実店舗が優先されます。『さらにEC運営に力を入れたい』と強く思ったのが、独立のきっかけでした」

伝食は創業時より、自社ECサイト、ECモール、直営店で事業を展開している。田辺氏が前職で培ったノウハウがあったため、EC事業を始めるハードルは低かった。ところが、すぐに大きな壁にぶつかる。事業運営において避けられない資金繰りだ。田辺氏は「オンライン・オフラインの両チャネルがあったからこそ売上が成長した」と強調する。
「1年目で売上が急激に伸びたにもかかわらず、税理士の方に『このままでは今年中に倒産する』といわれました。EC販売の場合は、事前に仕入れた商品が購入された後に時間をおいて売上金が入ってきますよね。先行投資が必要な分、売れれば売れるほど運転資金が必要になると当時は知らなかったのです。
直営店での販売を通じてキャッシュを得られていなければ、事業を継続できなかったと思います。最初は従業員の給料を払える保証がなく、一人で地道に運営しようと考えていましたが、4人の仲間が付いてきてくれたため、比較的スムーズに多店舗展開ができました」
立ち上げから約5年は、EC事業と実店舗販売の売上が同程度だったが、現在は80%がEC経由だ。それでも「商売の原点は店頭の接客」と田辺氏は語る。
「実店舗では、お客様とのコミュニケーションに力を入れています。私自身、前職で接客も担当してきました。リアルの泥臭い接客をEC上でも行っていきたいです」
自社ECサイトも存在する一方、伝食はECモールをメイン販路としている。楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング、Qoo10など多数の売り場で販売。「出品できる場所にはできる限り出す」方針だ。全体売上のうち、半数は楽天市場経由。多数の競合他社がしのぎを削るECモールで、どのように売上を伸ばしてきたのか。