前回の記事はこちら
X「Grok 3」で定性データを拾い上げる
近年、SNSは様々な機能が追加され、単に情報を発信する場から次フェーズに進化したといえよう。一方で、藤田氏は各プラットフォーマーの昨今のアップデートの傾向をこう話す。
「まったく新しい機能の追加や大規模なアップデートが少なくなってきています。ユーザーがバーチャル上で洋服を着替えられる、ライブ配信の画面に商品情報を複数出せるなど新たな活用方法も登場してはいますが、既にある程度の機能拡張を実施しつくしたのではないでしょうか」
そんな中でも、藤田氏が注目している動きがある。イーロン・マスク氏率いるxAI社の積極的なAI開発だ。同社は2023年11月にチャットボット型のAIモデル「Grok」を発表し、Xに搭載した。それが進化を遂げた「Grok 3」が、2025年2月から公開されている。現時点でβ版はXのユーザーなら誰でも利用可能となっている。
「Grokの最大の特徴は、X上のコンテンツをリアルタイムで取り扱える点です。現時点で精度には改善の余地があるものの、活用の幅は広がっています。X上の顧客の投稿分析、市場調査がスムーズになるでしょう。具体的には、X上での検索結果が表示されたページのURLをGrok 3に入力し、自社商品の評判をまとめるよう指示するといった使い方が考えられます」
こうした集計作業に加えて、一人のアカウントの投稿内容を深く分析することも可能だと考えられる。応用すれば、インフルエンサー施策にも生かせるだろう。
「インフルエンサーに商品の訴求を依頼する場合、今まではフォロワー数やコメント数、いいね数にもとづいて選定するのが一般的でした。これからは、Grok 3の活用によって、どのような影響力があるインフルエンサーなのか、自社商品との相性は良いのかなど、一歩踏み込んだ分析を行い最適な人を判断できるようになるはずです」
Grok 3の精度は継続的に改善されると予測できる。それにともなって、事業戦略や施策の検討に活用する企業が徐々に増えていくはずだ。藤田氏は「β版が提供されている今のうちに活用方法を研究しておいたほうが良い」と強調する。
「重要なのは定量と定性の両面によるデータ分析です。オンライン上で購入履歴などを収集できるEC事業者は、定量的なデータ分析は得意だといえます。しかし、UGCをはじめとする定性データがなければ、顧客心理を深く理解できません。顧客の声を集めてニーズを拾い上げるには多くの工数を要します。だからこそ、素早く施策を実行するためにAIの力を借りる必要があるのです」