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過去最高益を記録した洋服レンタル「airCloset」 愛される理由は“長い”カスタマージャーニー?

 月額制で普段着のレンタルサービスを展開し、事業成長を続ける「airCloset」。有料サービスのみならず、無料会員へのパーソナライズされたコミュニケーションにも注力している。その背景にあるのが、あえて長く設計されたカスタマージャーニーだ。このアプローチがなぜ有効なのか。株式会社エアークローゼット 執行役員/airClosetディヴィジョン ディレクター 石川桂太氏に聞いた。

顧客の納得感が継続利用に 有料会員までのステップが多い理由

 airClosetは、2025年2月3日でサービス開始から10周年を迎えた。洋服のレンタルサービス事業に参入する企業が増える中、パーソナルスタイリングを軸にファン層を拡大している。同事業の2025年6月期上期の利益は、過去最高となる1億8,500万円を記録。有料会員者数は4万人に迫る勢いだ。

「当社のレンタルサービスの強みは、プロのスタイリストが選ぶ点にあります。お客様が普段なら選ばないお洋服と出会えるのです。たとえば『今年のトレンドは黄色』とわかっていても、黒や白といった無難な色のお洋服を選んだ経験はありませんか。そんな方々が新しいアイテムに挑戦できるのは、airClosetを利用するメリットの一つでしょう」

株式会社エアークローゼット 執行役員/airClosetディヴィジョン ディレクター 石川桂太氏
株式会社エアークローゼット 執行役員/airClosetディヴィジョン ディレクター 石川桂太氏

 有料会員数の増加とともに注目したいのが無料会員数の推移だ。約4万人の有料会員を大きく上回る130万人以上が登録している。無料会員でもスタイリングなどの情報を受け取れるという。

「お客様が無料会員に登録するには、好みのファッションなどに関する質問に回答する必要があります。その結果をもとに、ファッショントレンドやキャンペーン情報をカスタマイズし配信しています。運営側にとっては工数がかかる作業です。それでも、細かな対応が無料会員から有料会員への移行率を高め、長期的な満足度の向上につながります」

 通常、EC事業であれば購入、もしくは有料会員登録までのステップを短縮し、コンバージョン率を高めようとする企業が多いのではないだろうか。それに対して石川氏は「あえて逆の戦略を選んだ」と話す。

「airClosetでは、カスタマージャーニーを非会員の段階から長く設計しています。並んでいる商品を選んで購入するシンプルなサービスとは異なり、スタイリストがどのようなスタイリングを組むかお客様にはわからないからです。多くのお客様が慎重に検討するため、無料会員に至るまでにも診断コンテンツが組み込まれています。結果的に、お客様がサービスの価値を十分に理解し、納得した上で有料会員に登録しやすくなります。実際にairClosetの場合は、登録までのステップを分けたことでコンバージョン率が向上しました

 有料会員になっても、更新月で離脱する顧客はいるだろう。この課題に対して、airClosetは「有料会員として登録している期間が6ヵ月超のお客様」をロイヤル顧客と定義。新規有料会員とロイヤル顧客でコミュニケーション方法を変え、継続的な関係を構築している。

 新規で有料会員となった顧客には、サービスの使い方をスムーズに習得できるようなサポートを実施。初回のスタイリング方針のチェックなど、届ける洋服の方向性について認識を合わせている。また、洋服を届けた後には電話やLINEでスタイリングや使い方に関するフォローアップを行う。

「お洋服を届ける際に、フォローアップの電話に関する案内を同梱しています。電話をかける理由は、全工程がオンラインで完結すると“ひと気”がなくサービスを遠い存在に感じるからです。ただし、中には電話を受けたくない方も少なくありません。その場合は、事前に断れる仕組みとなっています」

 一方で、ロイヤル顧客には過度なコミュニケーションを控え、提供する情報やタイミングを絞っている。

「使い方に慣れているお客様に丁寧に説明するのは、むしろ時間を奪うことになりかねません。お客様の状態によってコミュニケーションの切り替えが必要です」

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この記事の著者

山田優子(ヤマダ ユウコ)

神奈川県出身。新卒で百貨店内の旅行会社に就職。その後、大阪に拠点を移しさまざまな業界・職種を経験してきたが、プロジェクトベースの働き方に魅力を感じて2018年にフリーライターに転向。現在はビジネス系取材記事制作を軸に活動しながら、チームで商品企画・開発にも挑戦中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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