大手アパレル企業が店舗→ECの送客でぶつかった壁
データマーケティングプラットフォーム「b→dash」を提供するデータX。同プラットフォームを導入して短期間で主要KPIを改善したアパレル企業A社の事例を、宮川氏は紹介した。
A社は全国に約30の実店舗とECサイトを運営しており、実店舗で約150万人、ECで約90万人の会員を抱える大手アパレル企業だ。2020年初頭までは売上が堅調に伸びていたが、同年4-6月期には新型コロナウイルス感染症拡大の影響で売上が大きくダウンした。
一方でEC売上に目を向けると、2020年初頭までは緩やかな成長曲線を描いていたが、実店舗の売上が急落した同年4-6月期に60%増を記録していたと言う。
こうした状況を踏まえ、A社は実店舗で購入経験がある会員に対し、メールやLINEでEC限定のクーポンを配布し、EC会員と売上の増加を目指す方針を立てた。そして、施策の実現と成果を可視化する分析レポートの作成を目指し、MA(Marketing Automation)、BI(Business Intelligence)、CDP(Customer Data Platform)ツールをそれぞれ導入したが、利用を進める上でA社はふたつの壁にぶつかる。
ひとつめは、ツール導入/運用の壁だ。基幹システムなどにすでにデータは存在していたが、宮川氏は「施策や分析に必要なデータの準備に時間がかかっている状態で、導入から1年後の2021年4月時点においても施策や分析を開始できていなかった」とA社の当時の状況を振り返る。
A社が適切に実店舗で購入経験のある会員にメールやLINEで案内をするには、次の情報が必要であった。
- 顧客ID
- 氏名
- メールアドレス
- 年代
- LINE ID
- 商品ID
- 商品名
- 最終購入日からの経過日数
- EC未購入者フラグ
しかし、こうしたデータが自社の基幹システム内のひとつのテーブルにきれいに収まっているケースは一般的ではない。データの統合や加工を行うことで、初めて施策や分析に必要なデータを整合性のある形で取り出せるようになるが、 「施策の実施に必要なカラム9つのうち、7つは顧客データ・商品データ内に存在していたものの、ふたつは顧客データや商品データ、受注データを加工、統合した上で新たなデータを生成する必要があった」と宮川氏は語る。