コピーとビジュアルの関係性
広告クリエイティブを構成する2大要素は、キャッチコピーとキービジュアルです。この組み合わせにより、広告の目鼻立ちは決まります。どちらの要素も、それだけで本を1冊書けるくらい(実際、色んな人が書いています)ノウハウが存在します。この両者の関係性はどのようにとらえればいいでしょうか。私の場合は「まずコピーから」と考えています。
コピーは文章として一旦記号に落とし込まれているため、応用した際にも再現性が高いという特性があります。議論と思考を深めやすいのです。逆にビジュアルについては、ひとそれぞれ様々に受け取り、解釈の振れ幅が大きくなります。故に、コピーから着手することで、感覚に左右されず、ロジカルに積み上げたクリエイティブの構築が可能になるのです。そのため、制作過程の途中で事情変更などがあった場合も柔軟に対応しやすく、迷った際には本来の出発点に立ち返りやすくなります。
では、その具体的な手順を紹介しましょう。
まずは切り口を決めて、コピーのラッシュ
製品のオリエンテーションを受けたら、しっかりと理解を深めて、製品の価値を端的に整理し直すということです。製品の良さが立ってきそうな訴求の入り口とプロットを決めていきますが、この段階ではとにかく数を作ることが大事です。その上で、コピーをさらに製品の価値を表す要素を単語や文節に区切り、それぞれを「スペック寄り」から「ベネフィット寄り」への座標軸にプロットして、関連のある要素を線で結び、訴求の因果関係を明らかにしていくという手法を取ります。このように整理することで、キャッチコピーで端的にアプローチする切り口があぶり出されてきます。その上でキャッチコピーになりそうなエッジの利いた切り口を選別し、それぞれにおいてコピー案をさらに作成する、という流れになります。
選別することとともに、具現化するのが難しそうなものは、この段階で排除することも重要です。このケースではひとまず反転させた項目を選び出してみました。直感的に「あまり魅力を感じない」「小難しそう」「理解されにくそう」「そもそも薬事的に無理がありそう」と思われるものは、この段階で候補から落とします。
こうして選ばれた切り口それぞれに対して十数点のコピーを作り出すと、全体では百を超えるコピー案がでてきます。この段階での、どれほどの数を吟味したかが、訴求の精度を支えることになります。その際、言い回しが違っている、という程度のものが混じっていても構いません。実際、言い回しひとつで結果が大きく違ってくることもよくあります。また、これは後述しますが、この段階で選ばれなくとも、コピー案のストックを多く持っていることは、以後のステップで非常に役に立ちます。