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ECシフト促進には「顧客」「社員」「パートナー」のメリットを明らかに
第1回では、BtoB市場におけるECポータル(様々なBtoBメーカーの商品を扱うECプラットフォーム)の盛り上がりを受け、自社ECサイトを立ち上げる気運が高まっていると説明しました。独自に入手した販売データを有効活用できれば、これまでにない戦略的なマーケティングサイクルを回せるからです。また、なによりも販売代理店を介する間接販売が多いBtoB企業にとって、顧客を直接知る貴重な機会となります。
ただし、ことはそう簡単ではありません。ECポータルへの出品は、集客から受注・決済、納品までの一連のプロセスを既存プラットフォームに任せられます。裏を返せば、自社ECサイトの運営とは、これらをすべて自前で手掛けることを意味します。もちろん個々のプロセスは外部委託も可能ですが、全体のプロセスは自社で管理しなければなりません。そこで今回は、すべてのプロセスを自社の責任のもと行なうとはどういうことなのか、何に気を付けるべきなのかを考えてみます。
BtoBにおける自社ECサイトの運営には、次のようなプロセスの整備が求められます。まずは顧客の行動ステップごとに全体像を見ていきましょう。

いうまでもなく、顧客が自社ECサイトに訪問するのがEC販売の出発点です。そのため、より多くの顧客が来訪してくれるように手を打たねばなりません。BtoBの場合、まずは営業もしくは販売代理店を通じてEC利用を促すことになります。そして、BtoC同様にSEOで新規顧客を開拓し、広告やダイレクトメールで訴求するのも有効です。
これまで人手で行なっていた業務をスムーズにオンライン上に移行するには、営業や販売代理店にとってのメリットも準備しなければなりません。移行に協力する彼らとって、EC化は自分の商売の機会を明け渡すことになります。うま味がなければ、EC利用の促進に積極的になれないからです。
これは、よく聞くCRM(顧客関係管理システム)導入の失敗事例が参考になります。営業担当者に顧客データを入力してもらい、全社で共有することでマーケティングに活かそうとする企業があります。しかし、彼らがなかなか入力してくれないという話を耳にしますよね。情報の共有は自分のライバルの営業担当者を支援するようなものです。全社的なメリットがある、かつ入力が自分のミッションという建前が存在していても、それだけでは消極的になってしまうのが実際のところなのです。
提供するメリットは評価・報酬のみならず、負担の軽減でも構いません。営業部門や販売代理店が自発的にECシフトを推進できるように、企業だけでなく各立場へのメリットを明確にするべきです。