実店舗に行列 BtoCだからこその熱さがある
バーチャルなアバターを通じてライブ配信などを行うVTuber。昨今、小学生のなりたい職業に名前が挙がるほど存在感を増している。その人気を押し上げたともいえるのが、YouTubeのチャンネル登録者数100万人超のVTuberを多数抱える事務所「ホロライブプロダクション」だろう。2017年に1人目のタレントがデビューして以降、ファンを増やし続けている。
「漫画やアニメといったサブカルチャーとの相性が良い点が大きな特徴です。所属するタレントがYouTubeでゲームの実況配信などを行い、ファンも一緒になって楽しんでくれています。公式グッズも好評で、販売している実店舗には行列ができることも少なくありません。感情に響いたからこそグッズを買いに来てくれる。これこそ、BtoCの醍醐味だと感じています」(前田氏)
活動範囲は日本にとどまらない。「ホロライブインドネシア」「ホロライブEnglish」に所属し海外で活動するタレントもおり、世界中に熱狂的なファンが存在する。2025年3月8日・9日に幕張メッセで行われたイベントには、海外ファンの姿が多く見られた。場所を問わず視聴できるYouTubeが主戦場だからこそだ。
「海外でもグッズの需要は高いです。以前から日本で購入されたグッズが現地で再販売されるケースはありました。しかし、非正規品なども流通しているため公式サイトから安心して購入したい海外ファンは多いはずです。そこで、現在はアジア、北米、オセアニア、中南米、ヨーロッパのファンに向けて、自社ECサイトで受注・発送できる仕組みを整えています」(前田氏)

活動開始当初より、グッズの販売を望む声は多かったという。そのニーズを受け、同社は2020年にゲームやIP商品を取り扱うECモールで所属タレントのボイス販売をスタートした。その後、プリントオンデマンドが主体のECモールに場所を変え、キーホルダーやアクリルスタンドなどグッズの種類を拡充。さらに、自社で企画・製造するグッズに対するニーズの高まりを受けて、2021年9月に自社ECサイトでの直販を開始した。昨今はリアル販路も開拓している。
「モール型のECサイトの場合、他社商品も並びます。それよりも、当社所属タレントのグッズだけを取りそろえた売り場のほうが、ファンにも喜んでもらえると考えました。また、人気の拡大にともなって、ぬいぐるみやフィギュアなど求められるグッズのレベルも上がります。迅速かつ丁寧にファンへ届ける意味でも、自社ECサイトで販売する体制の整備が必要でした」(一條氏)
こうした同社の事業について、一條氏は「圧倒的コト消費」と表現する。何が通常の消費行動と異なるのだろうか。