成果につながる「最適なコミュニケーション」を顧客視点で設計
2014年に創業し、ウェブ接客手法によるコンバージョン最適化ツールを開発・販売するSprocket。“おもてなし”の本質をマーケティング活動に取り入れるべく、導入企業のROIにこだわって事業を展開してきた。とりわけECにおいては多彩な領域の企業を支援し、導入実績は250社にのぼる。
こうした数多くの経験から、深田氏は「『顧客体験の課題』を考える際にマーケターが陥りがちな傾向として、チャネル横断やレコメンドのパーソナライズ、データに基づいたロイヤリティプログラムなどの施策や方法を先に考えてしまうことがある」と指摘する。もちろんこれらは重要なことではあるが、それ以前に「探しにくい」「見つけにくい」といった基本的な不満に気づいていないことも多いと言う。
このような課題に気づいたうえで顧客体験を考えるにあたり、深田氏は「ユーザーの困りごとや求めている体験など、ユーザー側に課題発想の起点を置いて考える基本的なアプローチが大切」と語る。
たとえば、カートに商品が入っているのに購入につながらない「かご落ち」という現象がある。6〜7割がここで脱落し、事業者にとっては悩ましいことだが、実際にその理由を調査してみると「送料・手数料が高い」が35.8%ともっとも多く、ほかにも「会員登録が面倒」「選べる支払い方法が少ない」「配送日が遅い」など、さまざまな理由が存在する。
こうしたユーザーの気持ちに寄り添い、「どんな体験によってかご落ちが防止できるのか」という視点で施策を考えることが重要というわけだ。おすすめ商品の提示によるアップセル、クロスセルのアプローチや、「お困りのことはありませんか?」と気遣うQ&Aを表示するなども考えられるだろう。
「どんなにすばらしいデータやプラットフォームを設計してパーソナライズを実現しても、そのコミュニケーションが『売り込み』の印象を与えてしまい、ユーザーの不安・不満を解決できていなければ、離脱は止まらない。顧客のことを考えたコミュニケーションが実現できれば、成果は数字にしっかりと現れる」と深田氏は強調する。
ここで深田氏は、コメ兵の事例を紹介した。カートに商品が入っているのになかなか購入ボタンが押されず離脱の気配がある際に、カート内で「お困りごとはないですか」とよくある質問をプッシュ配信したところ、購入完了率はおよそ125%まで向上したと言う。