良い顧客体験を提供し続けるには試行錯誤が重要
こうした事例を振り返り、深田氏は「いずれも良質な顧客体験の成功事例だが、はじめから正解が見えていたわけではない」と語り、「成功の鍵はデータで効果を検証しながら、試行錯誤を繰り返すことにある。デキる店員も試行錯誤を繰り返しているのと同じ」と強調した。そして、試行錯誤すべき要素として「場所(ページ)」「タイミング」「内容」の3点を挙げた。
たとえば、前出のワコールの事例の場合、まずはデータをもとに選べないでいる「場所(ページ)」はどこか仮説を立て、検索ページや一覧ページなどで選べないと思い始める「タイミング」を手が止まるタイミングやスクロールの状況などから想像した。そのうえで、大量の商品から選べない場合に選びやすくする声がけの「内容」について考察を行った。
このように仮説を立てて実行し、検証するための分析データが一定量蓄積されるまでには時間がかかる。深田氏によると、「ひとつのウェブ接客の検証には1ヵ月くらい必要で、ひとつの接客シナリオあたり3回程度検証する必要がある」と言う。つまり3ヵ月かけるのが妥当であることを説明した。
なお、ポップアップ型ウェブ接客は「うざい」と思われるのではないかと懸念する人たちに向け、Sprocketで実際に行ったユーザーアンケートの結果を提示した。ある施策において、ポップアップを邪魔に感じたという人は10人中ひとりだったという。深田氏は「ユーザーから見て良質な接客体験になっていれば、『うざい』と思われることはない」と自信を見せた。
以上を踏まえ、深田氏は「『ユーザーが自分で情報を見つけることは困難である』という前提で顧客を観察し、状態に沿った接客体験の提供が必要。そのためには試行錯誤が大切」と繰り返し、セッションのまとめの言葉とした。