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約10年ごとに変化する買物行動のトレンド 2025年以降は何に着目すべきか
木原(ECzine) 2024年6月から始まった連載では、買物研ならではの視点から日本国内の買物行動や生活者の変化を見てきました。今回は、これまでの連載を振り返りながら買物研 所長の垂水さん、HAKUHODO EC+の山﨑さんと「これからの買物体験」についてお話しできればと思っています。まずは、お二人の経歴を簡単に教えていただけますでしょうか。
垂水(買物研) 私は2016年に博報堂に入社し、消費財メーカーや通販で健康食品などを販売する、いわゆるダイレクトレスポンスビジネスのマーケティング支援を担当していました。
買物研に異動したのは、2022年です。異動と同時に所長になりました。今は買物を軸に企業の広告や販促活動を捉え直すための研究を行っています。

山﨑(HAKUHODO EC+) 私は博報堂のコマースデザイン事業ユニットに在籍し、メーカーや事業会社のECコンサルティングをしながら、博報堂DYグループ横断型で企業のEC成長・マーケティングDXを支援するプロジェクト「HAKUHODO EC+」にも携わっています。同プロジェクトは2021年に立ち上がったもので、グループの知見を結集して、あらゆる角度からクライアントのEC成長を支援しています。
木原(ECzine) 買物研は、2003年から20年以上世の中や生活者の買物行動を見ていますよね。調査結果などからわかる変化があればお聞かせください。
垂水(買物研) 買物行動は、約10年スパンで変化しているといえます。買物研が誕生した後、第一のターニングポイントは2004年です。この年に、P&Gが「FMOT(First Moment of Truth)」を提唱しました。
FMOTは「生活者が購買行動を決める瞬間」の心理を概念化したもので、店頭ディスプレイやパッケージの重要性が問われていました。そのため、買物研でも「どのような気持ちの時に人は購買意欲が高まるのか」といった欲求に関する調査などを実施し、生活者心理の理解を深めていったのです。
その次の大きな変化は、2011年です。この年にGoogleが「ZMOT(Zero Moment of Truth)」という概念を発表しました。ZMOTはインターネットが普及したことにより、店頭で商品に出会う前の“ゼロフェーズ(=検索による情報収集)”が存在することを示しています。
ZMOTを踏まえて、買物研が提唱したのが「欲求流去」というワードです。これは、興味がある商品の情報を検索していくうちに情報過多になり、購買欲求が失われてしまう状態を指します。2010年代は、欲求流去を解決する手段について研究を進めてきました。
木原(ECzine) 2020年代に入ってからの変化はありますか?
垂水(買物研) コロナ禍をきっかけに、生活者にとってECが身近なものとなりました。こうした変化を踏まえて「顧客接点(店頭とデジタル)の融合」や、「データを使ってどう顧客にアプローチするか」といった課題がクライアント各社から寄せられています。また、AIなど最先端のテクノロジーを買物にどう生かしていくかも、今後より注目すべきポイントと捉えています。