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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

EC化率上昇の鍵を握るBtoB-ECの変革に迫る

ECの仕組みで世界中の製造業から在庫不足をなくしたい BtoB企業・ミスミの新サービス誕生秘話

 我々の生活に欠かせない商品をつくる製造業。その生産設備や自動化装置等は多様な部品が使用されている。中には、各部品の調達に時間がかかり、製造スケジュールが後ろ倒しになるケースもあるという。そのため、強いプレッシャーを感じる調達担当者は少なくない。こうした業界課題にメスを入れたのがミスミだ。本記事では、株式会社ミスミグループ本社 専務取締役 CIO 清水新氏、経営執行役 DJシステム推進本部 本部長 木戸雄介氏に取材。eコマースの仕組みによってBtoB企業の生産性を上げる戦略と在庫不足を解消する新サービス「D-JIT(ディージット)」誕生の裏側に迫った。

ものづくりの技術だけでは生き残れない ミスミがITに投資する理由

 ミスミは1963年の創業以来、工場で使用される自動化装置部品、金型部品、自動化関連間接材の製造販売や他社商品も含めた流通を手掛けてきた。取扱品数は3,000万点、SKU数にして800垓(1兆の800億倍)にのぼる。多様な商品を標準2日で納品しており、納期遵守率は99.7%以上だという。

 そんな同社は、2024年度第1四半期の売上高が前年同期比で10.7%増加し、過去最高を更新した。通期業績では前年度と比較して売上高は7.1%、営業利益は20.5%増を見通すなど、着実な事業成長を続けている。

 その裏にあるのが、ITへの積極的な投資だ。同社は「時間戦略」を重要なキーワードとして掲げ、製造業界の生産性を上げるシステムを次々に開発。特注部品のEC販売など、製造業界における効率的な受発注の仕組みづくりに挑戦している。

「製造業界は、Quality・Cost・Timeの『QCT』が非常に重要です。特にTimeの面では、作業が1時間でも止まると納期が遅れ、大きな損失につながります。時間が価値となる世界です」(清水氏)

株式会社ミスミグループ本社 専務取締役 CIO 清水新氏
株式会社ミスミグループ本社 専務取締役 CIO 清水新氏

 同社が取り扱う機械部品や間接材は、生産設備や自動化装置の正常な稼働に不可欠だ。調達が遅れると、下流の製造スケジュールにまで影響を及ぼす。そのため、木戸氏は「当社は製造業界のインフラ」と説明する。

「現在は、大量生産ではなく細かな需要へ対応しなければならない時代です。多様な商品を素早く届けるには、ものづくりの技術に加えてITを活用した生産性向上が欠かせません。しかし、実現しているBtoB企業は少ないのが実情です。そこで、当社はいち早くIT活用を始めました」(木戸氏)

 こうした戦略のもと、同社が生み出した代表的なサービスが三つある。一つ目が、アップロードされた機械部品の3Dデータにもとづき、AIが自動で見積もりを提示する「meviy(メビー)」だ。顧客から注文を受けると、最短1日で商品を出荷する。

 また、二つ目にはローコストかつミドルクオリティの商品を提供する「エコノミーシリーズ」がある。同シリーズの商品はミスミの自社ECサイトで購入できるほか、紙のカタログも用意されている。

 そして三つ目が、2024年4月に本格運用が開始された「D-JIT」だ。立案者の木戸氏は「トヨタ自動車株式会社が、製造の無駄を削減するために生み出した考え方『Just In Time』のデジタル版として名付けた」と話す。

  D-JITは、ミスミが提携しているサプライヤーの在庫を瞬時に組み合わせて、価格と納期を自動で瞬時に表示する。顧客は、ミスミや各部品メーカーに直接問い合わせずとも、同システム上で欲しい商品を検索し、注文が可能だ。サプライヤーごとに販売価格は異なるものの、数十~数百円程度のため、現時点ではミスミが差額を吸収している。

「当社の取引先では、受注から納品までに設計、部品表作成、部品調達・購買、組立・検査といったフローを挟みます。そのうち部品調達・購買では、1~2週間かけて数十~数百社をあたり、必要な部品をそろえなければなりません。その上、社内の上流からはコスト低減、組立・検査部門からはスケジュール短縮が求められ、プレッシャーが多い部門です。『部品調達・購買の生産性をもっと上げられるはず』と考え、D-JITの開発を決めました」(木戸氏)

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この記事の著者

ECzine編集部 藤井有生(フジイユウキ)

1997年、香川県高松市生まれ。上智大学文学部新聞学科を卒業。人材会社でインハウスのPMをしながら映画記事の執筆なども経験し、2022年10月に翔泳社に入社。現在はウェブマガジン「ECzine」で編集を担当している。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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