海外への展開範囲を拡大 将来的な在庫の「地産地消」を目指す
D-JITの仕組みが実現できた背景には、ミスミが2021年から取り組みを始めた基幹システムの刷新がある。約200億円を投資した新基幹システム「NEWTON」の開発が進み、散在する在庫のリアルタイムな積算が可能となった。2024年3月に国内で本格導入され、各現地法人にも順次展開している。それにともない、D-JITも今後は各国の拠点で活用可能となる予定だ。
「2024年度中に韓国、2025年度にはヨーロッパの国々へ新しい基幹システムを展開する計画です。当社が取り扱う商品を必要としている企業は、世界中に存在します。その上、市場環境によって一部商品の在庫が急激に不足するケースが珍しくありません。需要の変化に合わせてリアルタイム、かつ細かな数量まで在庫を把握し対応する必要があります。この点は、主にECサイト上に可視化されている在庫を販売するBtoC-ECとの大きな違いです」(清水氏)
各国における新基幹システムの導入は、D-JITを通じて確保できる在庫数が増える点で大きなメリットがある。一方、在庫の提供範囲が世界中に広がるため、リードタイム短縮に向けた組み合わせの最適化が今まで以上に重要となるだろう。
「現在のD-JITは、各地に散在する在庫をかき集めて必要量を提供する仕組みですが、将来的には『地産地消』を促進したいです。海外のお客様が求める商品をより近いエリアで集めて提供するほうが、物流の負担が減ります。結果的に利益の向上、さらには二酸化炭素の削減にまでつながるでしょう」(木戸氏)
こうした取り組みをはじめ、ミスミはIT戦略によって自社のみならず世界を巻き込んだ製造業界のDXを推進している。D-JITに続き、これからも生産性向上をかなえるアイデアを生み出し続けるという。
「当社ならではのユニークな価値を提供し続けたいです。製造業は、この数十年で働く場として魅力溢れる業界とは見られなくなってきたと感じています。しかし、我々の生活になくてはならない存在です。改めて『革新的で魅力的な職業』だと広めていきたいと考えています」(木戸氏)
「その原動力は、社員一人ひとりの挑戦にあります。近年はテクノロジーの発展によって、当社が重視してきた時間戦略の差別化要素が薄まってきました。さらなる進化が求められていると感じています。テクノロジー、ビジネス、グローバルを掛け合わせて、新たなアイデアを形にできる人材を育てなければなりません。そのため、当社の社員が次のステージに成長するのが、今後の大きな目標です」(清水氏)