「広告費いくら使えますか?」に即答できますか?
森野 あと、オンラインショップを円滑に運用するのであれば、数字に対する苦手意識を克服する必要があると思います。そもそも物販は、「仕入れて」「売って」のバランスが崩れると経営が成り立たなくなるので、会計の知識なども備わっていたほうが良いのですが、これがなかなか難しい。なので、バランスシート(貸借対照表)の見方から教えるケースもあります。月次決算を行っていない会社も意外とあるんですよね……。
オオスミ そうなんですよ。聞くと「3ヵ月ぐらい手がつけられていないです」といったケースもあります。そういった状況だと、「広告費にいくら使えますか?」と聞いても即答できないんですよね。売上から原価を引いて、利益が確保できる範囲で可能な施策を提案しようにも、現状把握するための土台作りから始めることは非常に多いです。
森野 話を聞くかぎりだと、「売れている限りは赤字にならないから、伸ばし続ければ良いんでしょう」と考えている方も多いのかなと思います。ただ、その考えだと「売れているのにもうからない」というターンが来るんですよ。キャッシュフローが適切に回っていないことに気づかず、業務の整理もしないまま「忙しくなったから」と人員ばかり増やしてしまい、固定費が上がって利益が出なくなってしまう。なので、日次とまではいかなくても週次・月次で健康診断ができる環境作りと、それが最低限できるだけの知識を備えるのはオンラインショップを運営する上では必須だと思います。
──「お客様を見る」と「数字を見る」はぜひ第4回と第7回で学んでいただきたいところですね。
オオスミ そうすれば、「気づいたときには船が沈む直前だった」といったことはなくなります。
こうした基本を押さえた上で、オンラインショップを“自分らしく”継続するための仕組み作りを考えていただくのが良い流れだと思います。皆さんどうしても「ツールを導入する」などわかりやすいところから手をつけたくなってしまいがちですが、導入した後に“自分たちが”継続できるのか。単に他社の真似や流行りに乗るのではなく、“自分たち”を主語にして考えていただきたいです。このあたりは、第8回でもお伝えしています。
森野 「今はTikTokが良いんでしょ」っていって始めても、うまくいきませんからね。
オオスミ 「御社はTikTokではなく、ブログのほうが良いですよ」といったアドバイスは本当によくします。“自分たち”を主語にすると、継続できてお金(売上)に変えやすい適切なルートは自然と見えてきますし、そうすれば他社の真似事をしなくても成功するオンラインショップになれるはずです。
森野 オオスミさんのこの考えは、第11回にも通じますよね。「時代や環境、人のせいにしない」「他者に決断を丸投げしない」は、本当にそうなんですよ。相談を受けていると「売れにくい商材だから」「物価が上がったから」「景気が悪いから」「法律が変わったから」みたいに、売れない理由を挙げる方は非常に多いです。
ただ、物価上昇や景気悪化、法律改正はどれも必ず予兆がありますよね。また、そんな中でも売れているオンラインショップはあります。純粋に外的要因だけが理由であれば、全員が売れない状況になりますから、厳しいいい方をすれば「サボっている部分がある」はずなんです。他責だと、いつまでも売れない状況からは脱却できないです。
オオスミ 「他責+現状維持を好む」もしくは「他責+土台固めをせずに新しいことばかりする」は、売れない状況から脱却できない傾向だと思いますね。業務改善をおもしろがれないと取捨選択もできないですし、売れる道筋も見つけられません。なので、マインドセットは本当に重要です。
連載「オンラインショップを伸ばす魔法の法則100選」をまとめて読もう!
本対談でお話しているオオスミ浩子氏による連載「オンラインショップを伸ばす魔法の法則100選」。全12回の記事をまとめて読めるebookを配布しています。チェックリストも用意しましたので、ぜひ日頃のオンラインショップでできていること・できていないことを可視化するのにお使いください。