「Makuake」は社員の挑戦の場 自社ECサイトとの使い分け方
自社ECサイトのほかにも、ワシオは応援購入サイト「Makuake」で複数回にわたって商品を販売してきた。鷲尾氏は「自社ECサイトが“顧客に寄り添った提案をする場”なら、Makuakeは“社員の挑戦の場”」と説明する。
同社がMakuakeで初めてプロジェクトを開始したのは2017年のことだ。当初は、鷲尾氏が主導で企画し、テーマや伝えるストーリーを作り込んでいた。しかし、2023年から建付けを大きく変え、同プロジェクトの運営を別スタッフに引き継いだ。
「私の仕事量を調整する意味合いもありますが、社内で新しいアイデアを生み出す意欲を高めたいと考えました。現在、Makuakeは売上を立てるよりも、社員が新商品を発表する機会として活用しています」
自社ECサイトとMakuakeでは、来訪する顧客層は異なる。そのため、新商品とともに、新規顧客にもちはだを知ってもらう入り口にもなっている。
「Makuakeは広報のような立ち位置だと捉えています。それぞれの販路やコミュニケーションの場に合った形で、もちはだの価値や魅力を発信していきたいです」
1年以内に失った売上を取り返したい 海外にも広がるビジネスチャンス
こうした取り組みによって鷲尾氏が目指すのは「おすすめの輪の拡大」だ。ワシオでは、社員たちが家族や友人など、周囲の人々に自然ともちはだを紹介する習慣が生まれている。それと同じように「寒いならもちはだを着れば良い」と伝える人を一人でも増やすことが、大きな目標の一つだ。
「その一歩として、まずはお客様と社員に還元できるだけの売上を立てたいです。当社は、楽天市場を撤退して1億円の売上を失いました。高い目標ではありますが、1年以内に失った分を取り返したいと思っています。
そして、将来的にはEC事業の売上比率をさらに上げたいです。現状はBtoB販売・OEMが60%、EC販売が40%となっています。3年以内を目安に、EC販売の割合を60%程度にまで引き上げる計画です」
事業拡大の可能性が広がっているのは、国内だけではない。ワシオでは、もちはだのほかにもアパレルブランド「YETINA」を運営しているが、ノルウェーの顧客から「北欧でYETINAを販売しないか」とメールが届いたという。
「北欧は、日本よりも寒い地域が多いはずです。これからは世界も含めて、寒さに悩んでいる人を探しに行き、当社の商品を届けていきます。そして、その人自身の世界から『寒い』をなくしたいですね」