約5ヵ月で大規模ECリニューアル 合い言葉は「方向は私が決める。方法は任せる」
自社ECサイトをリニューアルする前に必要だったのが、組織改革だ。その一環として、ワシオは運営体制を大幅に変更し、今まで独立していた営業企画部と通販部を統合。2部署の部長をそのまま「W部長」として採用し、名称を「価値提供部」に変更した。
「統合の理由は、部署間の連携強化です。単に『販売部』といった名称にすると売ることが目的になると考え、『お客様に価値を届ける』というミッションがわかりやすい価値提供部と名付けました。
今では社員間のコミュニケーション量が増え、体制変更の効果を実感しています。たとえば、法人営業の担当者が必要な商品を自社ECサイトの在庫から借りるなど、各社員に同じ組織であるとの意識が芽生えています」
同社は、2年ほど前から組織開発を行ってきた。鷲尾氏が現場の課題をヒアリングし、改善イメージを口頭で社員に繰り返し伝えていたため、社内からはポジティブな反応を得られたという。
「組織運営で大切にしているのは『方向は私が決める。方法は任せる』です。当社の社員は、全員がお客様のために自主的に動ける点が強みです。その良さを最大限に発揮できる体制を整えることに集中しました」
こうした取り組みが、自社ECサイトのリニューアルに生きた。同社は2024年5月にパートナー会社を決め、10月に新サイトをオープンしている。鷲尾氏は「思い切って社員の自立性に委ねたからこそ、約5ヵ月という短期間で実施できた」と話す。
「私が決めた『当社は既に素晴らしい商品をもっている。それを届けやすくすることを1番に考えよう』という方向性に対して、具体的に何が必要なのか能動的に考えてくれた社員たちには、感謝しかありません」
自社ECサイトに必要な要素や機能を決めるため、同社ではまずワークショップを実施した。社員15名ほどで、どんな場面でもちはだの商品が使用できるか、意見を出し合ったという。それが反映されているのが、トップページにある「冬のオフィス」「初めての冬キャンセット」「もしもに備えて 防災セット」といったシーン別のコーナーだ。加えて「『末端型』冷え性」「『内蔵型』冷え性」など、悩み別のおすすめ商品も紹介されている。
「もちはだの商品は、特定の条件下で価値を発揮するものです。そのため、使用イメージの解像度を上げる必要があります。『夏の相撲部屋はクーラーがききすぎて寒い』のように『そんなシーンはあるのだろうか』と感じる意見も挙がっていましたが、どれも社員が自身の生活を振り返った末に出したものでしょう。結果的に、自社ECサイトに訪問したお客様が迷わない導線を設計できたと思います」