メルカリが力を入れるVOC活用 社内の情報共有はどう行う?
次のテーマは、「VOC(Voice of Customer:顧客の声)を活用したサービス改善」。VOCの活用は、コールセンター業界において永遠のテーマと言っても過言ではない。活用しなければと思いながらも、実現できていない企業も多いのが現状だろう。工藤氏によると、メルカリでは「VOCプログラム」を立ち上げ、顧客の声を分析した結果を社内に届ける活動に力を入れていると言う。
「『VOC Portal』と呼ばれる、お客さまの声を収集した社内向けのサイトを構築したり、毎月『VOC新聞』を社内のカフェスペースに掲示したりと、声を可視化する仕組みを作っています。また、『VOC meeting』という活動も行われています。お客さまの声を分析して課題を特定し、プロダクト部門と一緒にどう解決したらよいかを考え、PDCAサイクルを回しています」(工藤氏)
VOCの活用事例として、「評価システム改善プロジェクト」という取り組みが紹介された。メルカリには、商品の出品者と購入者が取引完了時に互いを評価する仕組みがある。従来、「良い」「普通」「悪い」という3段階の評価項目が設定されていたが、「評価をめぐりトラブルが生じるケースがあった」と工藤氏は語る。
顧客の声に目を向けると、「普通」という言葉の解釈が人それぞれ異なることが課題として表出。あいまいな表現を用いることで、評価した顧客にとっては普通に感じたことが、評価される顧客にとっては「問題ない取引なのになぜ普通なのか」と不満につながることが見えてきたと言う。
「最終的に、『良かった』『残念だった』の2択に評価軸を変更しました。これにより、メルカリにおける取引数が40%伸びる中でも、お客さまの問い合わせ数の伸び率は10%に抑えることに成功しています」(工藤氏)
工藤氏の事例紹介を踏まえ、「こうした取り組みは、誰かが音頭を取って進めない限り、実現はなかなか難しい。社内でどのように取り組みが進められてきたのか」と、小田氏が質問を投げかける。これに対し、工藤氏は次のように答えた。
「メルカリジャパン CEOがカスタマーサービス出身ということもあり、トップダウンで変わった部分もあります。お客さまの声をプロダクトの改善に活かしたいという思いを経営陣が持っていることは大きいと思います」(工藤氏)
顧客の声を活かす取り組みが軌道に乗るか否かは、経営陣の意識や判断も関係すると言えよう。小田氏は「経営陣の方は覚悟を決めて取り組むことが必要。また、経営陣にそういった提案をしてみることをメンバーの方にもお勧めしたい」と呼びかけた。