SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

ECzine Day(イーシージン・デイ)とは、ECzineが主催するカンファレンス型のイベントです。変化の激しいEC業界、この日にリアルな場にお越しいただくことで、トレンドやトピックスを効率的に短時間で網羅する機会としていただければ幸いです。

最新イベントはこちら!

ECzine Day 2025 June【オンライン+スタジオ観覧型イベント】

2025年6月12日(木)10:00~17:25

ECが変えるBtoBビジネスの未来

【後編】直販で売上約6倍に BtoCで得たノウハウをBtoBにどう活かす?アネスト岩田が描く次の一手

 BtoB企業のデジタル化を支援するイントリックス 氣賀氏の連載「ECが変えるBtoBビジネスの未来」。第3回は、1926年に創業し100年近い歴史をもつBtoBメーカー・アネスト岩田株式会社の挑戦から、EC化のポイントを探ります。同社のEC事業に携わる株式会社ANEST IWATA A.I.R. コンシューマービジネスグループマネージャー 小林朋哉氏、コンシューマービジネスチーム 太田由佳氏、田畑哲哉氏に氣賀氏が取材。事業成長の裏側を前編・後編にわたってお届けします。後編は、同社のBtoB-ECの現在地とこれからについてです。

前編の記事はこちら

 前編では、BtoB事業を主軸とする圧縮機・塗装機器メーカーのアネスト岩田が、販売代理店経由ではリーチできない市場へのアプローチ手段として、BtoC領域で自社ECサイトの運営に挑戦した背景と、その過程を紹介しました。同社は、エアーブラシブランド「SPARMAX」を皮切りに、販売代理店との関係性や在庫管理などの課題を乗り越えながら、直販体制を整備。売上拡大と収益性の向上を実現しました。

 後編では、こうして培われたノウハウを本業のBtoBビジネスにどう展開しようとしているのか、アネスト岩田の今後のEC戦略を掘り下げます。

株式会社ANEST IWATA A.I.R. コンシューマービジネスグループマネージャー 小林朋哉氏(写真中央)/コンシューマービジネスチーム 太田由佳氏(同左)/田畑哲哉氏(同右)
株式会社ANEST IWATA A.I.R. コンシューマービジネスグループマネージャー 小林朋哉氏(写真中央)/コンシューマービジネスチーム 太田由佳氏(同左)/田畑哲哉氏(同右)

海外商品があふれる市場 価格ではなくブランド力で勝負

 EC事業の拡大に合わせて、アネスト岩田ではブランド戦略の再構築も進行中です。

 同社のエアーブラシ事業には、比較的高価格なアーティスト向けプレミアムブランド「iwata」と、一般消費者向けブランドの「SPARMAX」とがあり、それぞれ商品特性も顧客ニーズも大きく異なります。

 iwataは、米国市場で既に一定のシェアを獲得できています。「iwataがないと仕事にならない」というアート制作のプロフェッショナルもいるほどです。価格に見合った価値を提供できているといえます。こうした背景から同社は、日本国内でもiwataブランドを通じてプレミアム市場を育成するチャンスがあると見ています。

 ただし、このプレミアム性は、一般消費者には伝わりづらい側面があります。そのため、商品の良さを積極的に情報発信し、「なぜ高いのか」を納得してもらう努力が欠かせません。

 さらに、市場には2,000〜3,000円台の中国製エアーブラシがあふれています。SPARMAXでも1~2万円、iwataは2~6万円ですから、価格差は大きいです。単純な価格競争に陥らないためには、「プロ向けの高品質モデル」として徹底したブランディングが求められます。

アネスト岩田 EC全体像:取扱商品と取り組みの歴史
アネスト岩田 EC全体像:取扱商品と取り組みの歴史(クリックすると拡大します)

 そのため同社は、各ブランドの位置付けを明確にし、それぞれのターゲットに合わせたコミュニケーションを取る体制作りを進めています。たとえばSPARMAXの場合は、専用のブランドサイトを構築。BtoC市場に適した世界観やストーリーを打ち出しています。

 また、世界観を伝える上で、リアル接点も重要な役割を果たします。前編では、アネスト岩田が「エアーブラシをEC専売商品にした」とお伝えしました。そうすると、顧客が商品を手に取って比較検討する機会が必然的に少なくなります。しかし、エアーブラシのような機械工具は、“実際に触ってもらうこと”が重要です。そこで現在、同社は展示イベントへの出展を増やし、顧客が商品に触れる機会を積極的に創出しています。

 各ブランドの特徴を明確にしながら、顧客との距離をさらに縮める。これが、今後のアネスト岩田のEC戦略です。販売代理店を介さないということは、顧客からの問い合わせ対応や商品のメンテナンスも、自社で行う必要があります。同社はこうした直接的な接点を活かして、顧客が安心して同社のエアーブラシを購入できる仕組みを作ろうとしているのです。

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
自社ECサイトを軸に据えるアネスト岩田のチャネル戦略

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
ECが変えるBtoBビジネスの未来連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

イントリックス株式会社 代表取締役社長 氣賀崇(キガ タカシ)

1971年12月山口生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、ブラウン・ブラザーズ・ハリマン入社。ニューヨーク本社の国際株式投資部にて、日本及びアジア株のアナリストを務める。海外のインターネットビジネスへの投資に携わった後の2000年、サイエント株式会社に入社。デジタル戦略の策定やグローバルWebサイ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事をシェア

ECzine(イーシージン)
https://eczine.jp/article/detail/16753 2025/05/28 07:00

Special Contents

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

ECzine Day(イーシージン・デイ)とは、ECzineが主催するカンファレンス型のイベントです。変化の激しいEC業界、この日にリアルな場にお越しいただくことで、トレンドやトピックスを効率的に短時間で網羅する機会としていただければ幸いです。

2025年6月12日(木)10:00~17:25

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング