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Z世代の買い方の現在地 キーワードは“自分ごと化”
──大学生は洋服やコスメにお金を使う人が多いのではないでしょうか。松村さんは普段、どのように買い物をしていますか。
松村さん 洋服は、よくECサイトで購入しています。たとえば、Instagramではパーソナライズされた広告がストーリーに流れてきますよね。広告だとわかってはいますが、そこからECサイトに飛んで購入することも多いです。特に抵抗感はありません。
コスメの場合も念入りに情報収集をしますが、特にリップやアイシャドウなどは実物も確認したいです。私は“口コミ大好き人間”なので、どんなレビューがついているのか事前にオンラインで調べ込んでから、店頭で微妙な色味、質感の違いをチェックします。ネガティブな口コミも、もちろん理解した上で購入するか決めています。
事前の情報収集でよく参考にするのは、TikTokやInstagramで見かけるランキング形式の商品紹介投稿です。TikTokはコメント欄にわかりやすくレビューが書き込まれているケースが多く、いつも参考にしています。周りの友人も、同じように情報収集していますね。
小々馬教授 とはいえ、マーケティング効果はカテゴリーによって異なります。
アパレルやコスメのカテゴリーでは、SNS広告で一定の効果が見込めます。TikTokなどショート動画を活用したアプローチは、購買のきっかけとして有効に働くケースもあるでしょう。
ところが、他社商品に乗りかえられやすいヘアケアなどのカテゴリーでは、想像よりも効果が期待できません。「YOLU(I-ne社)」は市場での浸透に成功していますが、独自の世界観によって、Z世代に受け入れられ想起される機会とUGCを創出できているからでしょう。
通常、顧客の関心が高くないカテゴリーのブランドは、SNSで認知を得られても購入まではなかなか促せないのです。自社商品がこうした関与度の低いカテゴリーである場合、顧客がより関心をもっているジャンルやテーマに変容した上で、SNSでのプロモーションを行えば、効果が上がるかもしれません。
──SNS上では、同じような商品がたくさん紹介されていますよね。何が購入の判断基準になっているのですか。
松村さん 重視するのはコスパですが、単に安いほうを選ぶというわけではありません。少し高くても、身近な友人からの評価が高かったり、著名なレビューサイトで常に高順位にランクインしていたりする商品は、価格に対してパフォーマンス力が高いと思います。
少し前までは、流行に乗って格安越境ECサイトでも買い物をしていましたが、今では利用しなくなりました。友人たちも、価格の安さだけでなく、クオリティとのバランスを見ているように感じます。
──口コミのようなUGCが、重要な判断材料なんですね。一方で、企業が発信する公式情報はあまり参考にしていないのでしょうか。
松村さん 洋服を選ぶ際には、店舗スタッフのコーディネート画像をよく見ています。私は背が高いので、自分の体型に近い人を探して参考にしていますね。特に、好きなスタッフのコーディネートを一覧で閲覧できるとありがたいです。
そのほか、ECサイトにあると嬉しいのは、「スタッフコンテンツ×検索」などの連携機能ですね。コーディネート画像で使用されている全アイテムの詳細を、タップ一つで検索できると便利だと思います。私が利用しているECサイトでは、こうした機能があまりないんです。
正直なところ、ECサイトに掲載されている公式画像はモデルが自分とかけ離れており、自分ごと化しづらいと感じます。体型も異なりますし、コーディネートも「普段はあまりしないな」と思うものばかりです。