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ECzine Day 2025 June【オンライン+スタジオ観覧型イベント】

2025年6月12日(木)10:00~17:25

300Bridge代表 藤原義昭氏と探る 小売×デジタルの次なる転換点

「仲直り」は経営の永遠のテーマ クラシコム青木氏が描くD2Cの理想図と内製化にこだわる理由を紐解く

 コメ兵、ユナイテッドアローズでDXを推進した後に、現在は株式会社300Bridge 代表取締役として経営、事業戦略、デジタルに関する各社のサポートや情報発信を行う藤原義昭氏。同氏が2018年から2019年にかけて連載していた「オムニチャネルの次の話をしよう」が、アップデートして帰ってきました。連載第2回は、株式会社クラシコムの代表取締役社長 青木耕平氏と対談。前編は、2019年に行った前回の対談後にスマホアプリのリリースや株式上場を果たすなど、大きく環境が変化したクラシコムや青木氏の「今」から、新たな施策実施や組織作りの思想に迫ります。

前回の連載記事はこちら

“良い匂い”がしたからドラマを作ってみた 経済合理性だけではないクラシコムの経営軸

藤原(300Bridge) 前回の対談(前編後編)、2年ほど前のことかと思っていたのですが、2019年1月に公開されていました。6年以上も経っているんですね。

青木(クラシコム) 本当に? そんなに昔だと思いませんでした。2019年初頭だと、売上高もまだ30億円に到達していない頃ですね。スマホアプリもまだなくて、ドラマ制作に力を注いでいた時期だったと記憶しています。

藤原 まさに対談でもドラマの話をしていました。その後、株式上場や商材・チャネル拡張をするなど、すさまじい勢いで進化していきましたよね。改めて、青木さんにこの6年を振り返っていただきたいのですが。

青木 「なぜあの頃ドラマを作っていたのか」から話しましょうか。端的にいえば、新しい成長戦略を探していたんですよ。2018年まではLINE公式アカウント経由で順調に売上を伸ばしていたのですが、料金体系が変わったことで戦略の見直しが必要になりました。手探りでいろいろな方法を考える中で「何か“良い匂い”がするから、ドラマ制作をしてみよう」と動き出したのが2019年です。

 ちょうど併せて取り組んでいたYouTubeの伸ばし方がわかってきたのも2019年で、その裏側ではスマホアプリ開発を進め、「これがリリースされたらどうなるのかな」と不安とワクワクが入り交じっていました。

株式会社クラシコム 代表取締役社長 青木耕平氏
株式会社クラシコム 代表取締役社長 青木耕平氏

藤原 当たり前のように話していますが、青木さんは常にカードを何枚ももっている人ですよね。僕から見ると、複数の選択肢の中から「いつ、どのカードを切るか」を注意深く状況を見ながら決めていく人というイメージがあります。LINE、ドラマ、YouTube、スマホアプリと切ってきたカードも多様ですが、恐らく「あえて切らなかったカード」もたくさんもっているはずです。その判断の線引きはどこにあるのでしょうか?

青木 改めて言語化しようとすると難しいですね。漠然としているかもしれませんが、「クラシコムはこうあるべき、こうでありたい」という像が明確に存在し、それに基づいて判断をしているのだと思います。

 たとえば、社員から新しい提案があった際に「ゴルフにたとえると、これはOBゾーン(プレーできる領域の外側)だね」「打てば簡単に当たるフェアウェイだね」「ラフ(フェアウェイとOBゾーンの間)だから迷うけれど、やってみようか」といったような話をよくします。取り組む際には、まずフェアウェイの中から選んでいくイメージです。

藤原 多くの経営者は、その「フェアウェイ」がわからなくて悩んでいるんですよ、きっと(笑)。

青木 最終的な判断軸は営利企業としての「経済合理性」に帰結するとは思うのですが、厳密にいうとそれだけではなくて……僕が好きな彫刻家が「『これを作ろう』と思って彫っている』のではなく、この中に埋まっているものを掘り出しているんだ」と話していたことがあるのですが、それに近い感覚かもしれません。まだ全貌は見えていないけれど、やっていけば必ず描いている『あるべき姿』になっていくはず。その感覚を信じて取り組んでみたらそのとおりになった。そんなイメージです。

藤原 言葉にすると感覚的にも思われますが、青木さんの中ではきちんとロジックとして成立しているんですよね、きっと。

青木 僕がフェアウェイだと判断できるのは「社会」と「クラシコム(企業体)」に対するレイヤーで、共同創業者の佐藤(友子氏)は「事業」や「サービス」のレイヤーにおける感覚に長けています。なので、お互いの感覚をすり合わせながらやることを決めています。

 ただし、絞り込みばかりすると原理主義的な思考に陥り、感覚が痩せ細ってしまうリスクがあると自覚しているので、適宜思考をアップデートし、フェアウェイだといえる範囲や定義を広げるように心がけています。

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常に学習する組織を率いる青木氏が今作りたいのは○○○○システム

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この記事の著者

岩崎史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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