データを武器に全社を巻き込み、カスタマーサービスを向上させよう
最後のテーマは「データを活用したLTV最大化への挑戦」だ。「Goodmanの法則」によると、商品やサービスに不満や疑問を感じた際に、問い合わせのアクションを起こすのは4%で、残りの96%は不満や疑問を抱えているにもかかわらず、問い合わせをしないと言われている。カラクリの独自調査でも、問い合わせをしない顧客(サイレントカスタマー)は約7割存在する。なお、そのうち約3割は競合サイトで購入をしているという結果も出ていると言う。
顧客の不満を解消した際にどんな効果が現れるかを説明すべく、小田氏は「メルカリエンジニアリング」のデータを紹介した。悪い体験をして問い合わせをした顧客の再購入率や継続率は、悪い体験をして問い合わせをしなかった顧客よりも高くなっている。
小田氏は「これらのデータから、カスタマーサービスで不満解消体験を提供できれば、事業成長にも作用する」と説明した上で、今後LTV向上のためにメルカリが考えている取り組みについて問いかけた。
これに対し工藤氏は、購入した顧客よりも出品した顧客からの問い合わせが多いメルカリの現状を踏まえ、「購入に比べると、商品を売るにあたってのステップが多いため、出品するお客さまの体験をより改善していきたい」と語った上で、こう続けた。
「中でも、『初めて出品する』という体験がつまずきやすいポイントと考えています。メルカリでよく出品していても、いつもと違うものを売る場合は『初めて出品する』という体験になります。単に初回という切り分けではなく、どの領域に対して初めてなのかなど行動を細分化し、その中でこういった体験をしているお客さまは今後よりメルカリを活用してくれそう、この体験は早く改善したほうがよりよい体験を生むことができそう、といったように深掘りし、お客さまを強固にサポートする仕組みを作っていきたいと考えています」(工藤氏)
現在、同社ではこうした取り組みを人の力を使って行っているが、将来的には自動化を進めていきたいと言う。これを受け、小田氏も「カスタマー視点で見ても、問い合わせをするのはハードルが高い。困るタイミングを予測し、そのタイミングで寄り添うことが自動対応でできるようになれば、問い合わせのハードルは劇的に下がるはずなので、カラクリとしてもこうしたシーンを増やしていきたい」と述べた。
最後に小田氏は、データドリブンなカスタマーサービスを実現するポイントを次のようにまとめた上でこう語り、セッションを締めくくった。
- 顧客接点を増やすチャネル選定:効果を見える化し、勝ちパターンを構築
- VOCを活用したサービス改善:「顧客の声」で全社を巻き込む
- データを活用したLTV最大化への挑戦:データを基に、カスタマーの問題解決の先手を打つ
「すべてに共通して言えることは、『データを武器にする』ということです。データを見える化し、活用してカスタマーサービスを練り上げる必要があります。データを武器に全社を巻き込んでいきましょう」(小田氏)