顧客離反やSNS炎上を避けるには デジタル上でも意識したい“細やかな気遣い”
インターネットの登場以降、ブランドと顧客のコミュニケーションは親密さを増している。この変化に最も貢献しているのが、テクノロジーの進化だ。ブランドから顧客へのコミュニケーションが一方通行であったマス主流の時代と比べると、メール、チャット、SNSと様々なチャネルが生まれ、インタラクティブなやりとりが当たり前なものとなっている。言い換えると、「情報の“発信者”と“受信者”の垣根がシームレスになった」ともいえるだろう。
そんな時代背景を踏まえ、「カスタマーエンゲージメントはますます複雑化している」と語るのが、Brazeのシャロン・パネロ氏だ。同氏はマッキャンエリクソンでブランドの成長支援に加え、SNS台頭以前よりリアルタイムで発信されるソーシャルコンテンツにまつわる研究を手がけ、Braze入社後はオムニチャネルエクスペリエンスの可能性を追求するために「427° Innovation Lab」を立ち上げている。
「私は、戦略コンサルタントとして働きながら『427° Innovation Lab』で日々アナログとデジタルをつなぐ“融点”を探っています。同ラボのコンセプトは『Forging lasting connection between consumers and the brands they love(消費者と彼らが愛するブランドとの永続的なつながりを構築する)』で、これを体現するためにある金属の融点に近い『427°』をラボの名前に加えました」

パネロ氏は前出のとおり、SNSがマネタイズの手段として浸透する以前から研究と実践を重ねてきた人物だ。Brazeに入社してからも、広告に限らずブランドのあらゆるコミュニケーションを手助けしてきた同氏は「ブランドの成長率を左右する要因として、差別化とコミュニケーション最適化の重要度が年々増している」と説明。さらに「SNSの影響力も高まっており、今や最重要チャネルといっても過言ではない」と付け加えた。
「ブランドは、“残念な顧客体験”を作らないよう努力しなければなりません。BrazeがForrester Consultingと共同で実施した調査によると『自分に無関係なコミュニケーションを不快と感じる』と回答した消費者は90%に上り、過度なアプローチがブランド離れのきっかけになる結果も示されています。
たとえば、仕事をしている平日昼間に頻繁にプッシュ通知が届いたり、自分が探してもいない商品のレコメンドが何度も送られてきたりしたら、うんざりした気持ちになりますよね。購入直後にその商品の割引クーポンが届いたら、もうそのECサイトで商品を買いたくなくなるかもしれません。こうした体験は離反を生むだけでなく、SNSなどで瞬時に拡散されてしまう可能性もあります。ブランドと顧客を取り巻くすべての接点・プロセスにおいて“細やかな気遣い”が必要な時代だといえます」