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インターネット広告黎明期に業界入り その転機は地デジ化に
石川(MAISON KAPPA) 田中さんと今のように交流するようになったきっかけは、2024年の「ECzine Day(※パネルセッションで一緒に登壇)」でしたね。アナグラム(田中氏の前職)でのご活躍は存じ上げていましたが、実はそれ以前のキャリアは知らなくて……インターネット広告の世界に入るきっかけは何だったのでしょうか?
田中(Yuwai) 僕は工業高専を卒業後、新卒でNHKに放送エンジニア職として入社しました。地デジ化前の時代だったので、セールスをしながら電波関連の技術対応をするという、いわゆるフィールドエンジニアやセールスエンジニアのような仕事ですね。
その仕事を9年ほど続けたところで地デジ移行が決まり、職がなくなる危機感から転職を決めました。

石川 そこから、どうしてインターネット広告の世界に?
田中 元々、高専時代にGoogleが登場し、mixiなどのSNSも流行り始めたので、インターネットのおもしろさは既に知っている世代でした。高専でデータベースやエンジニアリングについての知識をつけていましたし、ちょうど転職を考える頃にGoogle 広告が生まれて、インターネット広告を仕事にしてみても楽しいのではないか、と考えたんです。その直感を信じてみることにしました。
石川 仕事がなくなりそうな危機感の中で、新しく生まれたばかりの仕事に就こうという勇気もなかなかですよね。
田中 僕は他の職種に移ってまでNHKに居残るより、たとえ収入が下がっても新しくて楽しいことができる人生のほうが絶対に良いはずだと思っていました。元々、高専に入ったのも「普通に高校から大学に進学して社会に出るのはつまらないな」と思ったからで、みんなと同じキャリアが嫌だったところもあるのかもしれません。
当時の僕は29歳でした。インターネット広告はまだ新しい業界で、全員がスタートラインに立っている状態だったので、この年齢から異業種転職をしても遅くはないはずと思えたのも大きかったです。海外の様子を見るかぎり、インターネット広告もGoogleもこれから世の中のスタンダードになっていくはず。そもそもこれからデジタル化が進むのなら、転換期は今に限らず来るだろう。だったら早いうちに変わっておくべきで、失敗したらその時に考えたら良いとも思っていました。
石川 そう聞くと、AIの台頭によりなくなる職種があるのではといわれている今も似たような環境かもしれませんね。田中さんの考えは、今の若手にも参考になるのではないかと思います。