2020年、選ばれる事業者になるために取り組むべきことは
来たる2020年のEC業界の動向を山崎さんに予測してもらったところ、「OMOがより進むのでは」と答えが返ってきた。なかでも、「店頭ECが進む」と考えていると言う。
「マーチャントによっては、実店舗とECを対立概念として語る傾向がいまだにありますが、本来はお互いに活用し合える存在です。消費者の目線で見ると、実店舗で商品を見ながらECで検索し、レビューを駆使して最適な商品を見つけ、買う商品を決めるというハイブリッドな使いかたをしたいはず。それこそがOMOと言えますが、日本ではまだあまりその流れが進んでいません。
先日、ポルトガルのリスボンで『Web Summit』に登壇した際に市内の視察も行いましたが、ある店舗では売れ筋商品に大きなPOPが掲げられていて、そこには二次元コードが印刷されていました。コードをスキャンすると、その商品のECページに飛び、色やサイズなどを選んで購入することができるようになっていたのです。こういった取り組みが2020年、日本でも増えていくのではないかと思います。当社でも引き合いが増えている状況です」
OMOに取り組むには、自社ECの機能拡充がカギとなる。検索の精度を高め、店頭で探している商品が適切に検索結果に表示されるようにしたり、商品選定に悩む消費者に対し、決め手となる購入者の生の声をレビューで提示したりと、積極的に情報提供を行うための手法はさまざまだ。しかしながら、現状はほとんどのECサイトがそこまでの機能実装に至っておらず、顧客はAmazonなどのモールに掲載されたレビューを見て、そのまま商品購入を行ってしまう。
「店頭で積極的に自社ECサイトの情報を見てもらえるように誘導する。そういった取り組みをしないと、実店舗を持つ事業者はみすみすチャンスを逃し、EC専売業者にどんどん負けてしまいます」
ZETAの OMOソリューションに関する事例は、「2020年の早い時期に公開できる見込み」だと山崎さんは語る。このほかにBtoC EC市場の20倍のマーケットがあると言われているBtoB ECについても鋭意マーケットリサーチを行っており、2020年以降も検索の重要性を世の中に浸透させ、より快適な検索ができる環境を世の中に提供し続けていくとしている。
顧客体験、信頼、そしてリアルとの融合。2020年以降も「選ばれる事業者」になるためには、OMOを支えるECサイトを頼りがいがあるものに強化していくべきではないだろうか。その現実的な第一歩は、旬なツールを追いかけるのではなく必須機能の見直しから始まるのかもしれない。