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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

ECアナリスト・本谷知彦が解説 越境ECの今と未来

日本製品の需要に期待も注意したい越境ECの落とし穴 巨大市場で成功する鍵はビジネスモデルの見定め力

 企業の事業規模を問わず、新たな販路として海外に目を向けるケースは少なくありません。しかし、可能性を過大評価していないでしょうか。株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役 ECアナリスト 本谷知彦氏が、あらゆるデータを活用して越境ECの今と未来を考える本連載。今回は、実際に成果を上げるために押さえておきたい2つのビジネスモデルを解説します。

日本製品の越境EC市場規模は国内の家電量販店並み?

 経済産業省発表の「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」によれば、2023年の日本製品の中国人消費者による越境EC購入額は2.43兆円、米国人消費者による購入額は1.48兆円となっています。合算すると3.91兆円という巨大な市場規模です。2013年がそれぞれ0.39兆円、0.43兆円、合せて0.82兆円のため、10年間で4.8倍に膨らんだ計算になります。

 特に中国人消費者による購入額は10年間で6.2倍です。いかに中国人消費者による購入額が伸びているかが、数字から読みとれます。

 参考までに、観光庁の報告書からインバウンド消費について見てみると、2023年の国別旅行消費額では中国人が7,604億円、米国人が6,070億円となっています。この旅行消費額は、買物代以外にも宿泊費、飲食費、国内交通費などが含まれた消費総額です。それらを合せても、越境ECでの購入額の方がはるかに大きいということです。

日本製品の越境EC市場規模(中国人消費者・米国人消費者による購入)(単位:兆円)
日本製品の越境EC市場規模(中国人消費者・米国人消費者による購入)(単位:兆円) 出典:「電子商取引に関する市場調査」(経済産業省)をもとに筆者が作成

 越境ECの市場規模について、もう少し掘り下げましょう。中国人消費者、米国人消費者合せて3.91兆円の購入額ですが、額が大きすぎてその大きさをイメージしづらいかもしれません。そこで国内の他市場(EC、実店舗を含む市場規模の総額)と比較してみたいと思います。

 2023年時点でホームセンターの市場規模は3.34兆円と越境ECより少なく、反対に家電量販店は4.63兆円と大きいです。またドラッグストアは8.34兆円と越境ECの2倍強もあるため、これを超えるのはまだ随分先でしょう。

 円安、訪日外国人の増加により、当面の間、越境ECには追い風が吹き続けると思います。そのため、越境市場規模は今後も増加すると予想されます。付け加えれば、3.91兆円という額はあくまでも中国人消費者、米国人消費者による購入額です。両国以外の消費者による越境ECでの購入額を含めると、全世界における日本製品の越境EC市場規模の全体額は4.5兆円程度ではないかと私は推定しています。だとすれば、現時点で既に家電量販店と同規模ということになります。他市場と比較して、あらためて越境EC市場規模の大きさを再認識できます。

他の市場規模との比較(2023年)
他の市場規模との比較(2023年) 出典:「商業動態統計」(経済産業省)※ただし日本製品の越境ECの市場規模を除く

 以上のように、日本製品の越境EC市場規模は巨大です。しかしながら、私はこの数値には落とし穴があると考えています。ここからは、越境ECを検討している事業者が注意すべき点に触れます。

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混同してはならない2つのビジネスモデル 市場規模には大きな差

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この記事の著者

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役 ECアナリスト 本谷知彦(モトタニ トモヒコ)

シンクタンク大和総研にてITの主任研究員、金融システム系コンサルタント等を経て、2013年より国内外の産業調査・コンサルティング業務にシニアコンサルタントとして従事。2017年担当部長兼チーフコンサルタントに就任。EC業界のスタンダードな調査レポートとなっている経済産業省の電子商取引市場調査を201...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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