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「ステマ規制=インフルエンサーマーケは終わり」ではない
2023年、SNS運用に携わる人々にとって大きな変化と言えば、「ステマ規制」が始まったことだろう。同規制は、景品表示法の「不当表示」に「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難な表示」が追加されたもので、インフルエンサーなどが事業者の依頼や指示を受けて投稿・表示を行った際に、「PR」など広告と明確に示した記載がなければ事業者側が罰則を受けることになる。
「2023年の10月1日に施行され、ニュースなどでも取り上げられていたため、各社きちんと対策をしている様子がうかがえます。しかし、罰則は過去に行った投稿にまでさかのぼるため、過去にギフティングをした人のリストを見直すなど、改めて漏れがないか確認しておくと安心です」
こうした規制強化がされると、つい尻込みしてしまいがちだが、藤田氏は「線引きがはっきりしたので、守るべきことをきちんと守れば良いだけ」と続ける。
「今回の件で、インフルエンサーマーケティングやギフティング施策そのものの意味がなくなったわけではありません。トレンドが変わるかもしれないため、注視する必要はありますが、拡散力のある第三者からの訴求効果をより高める表現やアプローチ方法を自社の施策で試してみるのも、ライバルより一歩先を行くには欠かせない動きです」
生成AIの台頭で新たな職種が業界に誕生するかも
もう一つ、2023年に話題を集めたトピックは「生成AI」だ。クリエイティブ、特に創作物の領域においては活用の是非から問われているが、「2024年は続々と、事業者の業務への組み込みが進んでいくだろう」と藤田氏は言う。
「商品画像の背景を変えたり、バナーを生成したりといった業務効率改善を促すものから、静止画を動画化できるような従来の不可能を実現するツールまで、技術の進化は目を見張るほどです」
ただし、こうした新たなツールが業務の中にどう活きるかは、使う人の技量にも左右される。欲しいアウトプットを人間が具体的に頭の中でイメージできているか、それを生成AIと共有できるように言語化できるか。藤田氏は「そう遠くない未来に『プロンプトエンジニア』と呼ばれる職種が一般化し、人材として重宝されるようになるのでは」と予測する。
「これまで人間のデザイナーがくみ取ってくれていたような『行間』を、現状の生成AIはまだ認識できません。そのため、オリジナリティーのあるクリエイティブを作るには、AIに自社の個性や表現したいものをきちんと伝える必要があります。思い通りのアウトプットを得るための言葉選びは、もしかするとSNSや検索広告出稿時にキーワード設定を行う際の発想と共通点もあるのではないでしょうか」
確かに、広告出稿時にもターゲットが決まりきらず、商材や性別・年代などを大きく取ってしまうと、思ったような効果が得られなかったり、費用対効果が悪くなったりしてしまう。最短距離でアプローチする方法を考えてアウトプットする発想は、どこでも活用できることの表れとも言えよう。
「One to Oneのコミュニケーション精度を上げるためのクリエイティブの作り分けや、人手不足をAIで解消するのならば、陳腐化しがちな表現の部分に人間のエッセンスを加えて個性を出さなければなりません。こうした新たな角度からの研さんが求められ始めるのが、2024年なのかもしれません」