消費者が求める「透明性」とレビューの重要性
ここまでの話をまとめると、「店頭とECは本質的によい補完関係にあり、カスタマーに納得のいく買い物をしてもらいやすい下地が整ってきた」ということになる。これが今回のセミナーの趣旨のひとつだが、さらにもう1点、欠かせない視点があると山崎氏は言う。
「下地が整ったなかで、さらに大事なことはなにか。いろいろな言葉があるのですが、私たちは『透明性』という言いかたをしています」
すでに山崎氏が述べたとおり、消費者が納得のいく買い物がしやすい環境が整えば、企業やブランドが一方的に仕掛けるマーケティングは受け入れられにくくなる。消費者の信頼を得るには、透明性を大事にすることが重要だという。
「透明性というとわかりづらいですが、カスタマーが極力納得のいく買い物をするために必要な情報を、惜しまず提供するということです。『この商品はこういう機能があります』『こういう良い点もあれば、こういう悪い点もあります』『これがもしお客様のニーズに合っているようだったらお買い上げください』という姿勢でなければ、誠実ではないと思われるようになるでしょう」
透明性を確保するうえで欠かせないのがレビューだ。「SHOPTALK」のあるセッションでも、「ハッピーなカスタマーは、最強のマーケターである」という言葉が出たと山崎氏は振り返る。また同セッションでは、「企業とカスタマーのどちらを信用するか」という調査結果が紹介され、企業の情報ではなくカスタマーの情報を信用する人が約3倍も上回っていたという。さらに、レビューが10件になるとCVRが1.5倍に、50件では2倍になるというデータもある。
個人が情報発信する時代、企業がするべき努力はハッピーなカスタマーを作ること。そしてレビューを恐れず、積極的に活用していくことなのだ。
「当社はレビューエンジンの提供も行っていますが、悪いことを書かれたくないからと踏み切れない企業もまだまだ多いのが現状です。ですがそれでは、取り組んでいる企業に比べて後塵を拝していくことになるのではないでしょうか」
ただし個人から発信される情報量は膨大なため、分析していくノウハウも必要だ。有効なデータとそうでないデータを分類しながらデータを構造化していくことも、透明性を向上するために必要になると山崎氏は付け加えた。
もちろん、今回のテーマである店頭でのデジタルマーケティングでも、レビューは重要な要素となる。店頭でネットのレビューをチェックするのは、すでに当たり前の消費行動のひとつだ。そうした場面で、積極的に自社のEC利用を促進する施策を行っていくことが必要不可欠な課題となる。