デジタルマーケティングは消費者の幸せにつながる
続いて山崎氏は、「消費者にとっての幸せとは何かを考えてみたい」と切り出した。
「デジタルマーケティングによって、パーソナライズができ、よりきめ細やかなマーケティングができるようになりました。それによって消費者の使えるお金が2倍3倍と増えるわけではありません。では何がいいのかというと、いちばん重要なのは、後悔する買い物をしないということなんですね」
納得のいく買い物ができることが、消費者にとってもっとも幸せな購買体験だと山崎氏は語る。それは従来のような、イメージ戦略でエモーショナルに消費者を動かそうとする、画一的なマーケティングでは実現が難しい。
「タバコやお酒、缶コーヒーなどであればイメージ戦略でもいいのですが、機能性が高いものを買ってもらうときは、『自分はいい買い物をした』『まさに自分が求めていた製品だ』と思ってハッピーになってもらうということが重要です。デジタルマーケティングではそれがやりやすくなるのです」
ECでも店頭でも、コマースには本来、「商品を探す」「お金を払う」「物を受け取る」の3つの機能しかないと山崎氏は説明する。このうちマーケティングが活躍できるのは、商品を探す=商品検索のシーンだけだ。
ECではすでに、商品検索におけるパーソナライズを実現できていたが、実物を見られないのが欠点だった。実物を見られる店頭で、ECのパーソナライズを展開すれば、今まで以上に納得のいく買い物ができるようになるということだ。
「これは大きな転換点です。デジタルとリアルの融合によって、より納得のいく買い物ができるようになる。ということは、企業側の勝手なロジックによるマーケティングは、今後急速に通用しなくなっていくということでもあります」
これまでマーケティングといえば集客がメインで、広告やSEOに予算の大半が使われていた。ところが近年は、CRO(コンバージョン率最適化)や、バーティカルファネルといった言葉に注目が集まっている。むやみにファネルの直径を広げて集客を増やすことよりも、ファネルの角度を垂直方向に太くしていき、集客後のコンバージョン率を上げていくほうが、費用対効果が高いと考えられるようになった。店頭におけるデジタルマーケティングの拡大も、CROと同様の戦略だと言えるだろう。