販促・マーケも本質的には「営業」 消費者理解に必須な想像力とは
磯山 齊藤さんの行動原理が見えてきたような気がしました。これまでのキャリアで身につけたフットワークの軽さが現在のビジネスにも活きているとうかがえますが、「BELMISE」という商品、着圧レギンスというカテゴリーで勝負すると決めた経緯についても、教えていただきたいです。
齊藤 最初に着圧レギンスを扱おうと決めたのは、マーケットインの思考からです。「これを作りたい」という熱意からD2Cの世界に入ったわけではないので、「市場にニーズがある商品」を軸に何を作るべきか考えました。
そこで行ったのが、売れ筋商品のネガティブな口コミに着目し、消費者ニーズの把握と現時点で不足している要素を探ることです。消費者が自ら言語化してくれた不満点を改善・解消した商品を作れば、今の市場に存在する商品に満足している人も、不満を感じていた人も取り込めると考えました。さらに意識したのは、「市場規模やニーズの深掘りと、新規獲得戦略の設計」です。ここでは、商社時代に身につけた3C・4P・5F分析の知識や、販売促進の経験が活きています。
磯山 商社での経験は大きいですね。営業と販売促進は一見すると異なる職種・業務内容に見られがちですが、「相手にものを売る、届ける」という意味では共通項も多いと思います。
齊藤 D2Cビジネスを実際に始めてみて、マーケティングも営業も本質的には変わらないと感じています。相違点があるとしたら、営業はBtoB・BtoCいずれも「目の前にいる人」にものを売るのが仕事ですが、販売促進・マーケティングは対象が「n人」になるため、顧客の実態が掴みづらい点にあるのではないかと思います。ここで必要になるのが、想像力ですね。
「BELMISE」を開発しながらも、私自身は着圧レギンスのユーザーではありません。そこで私は当事者意識を持つため、妻の趣味嗜好・行動を徹底的に観察することにしました。なぜなら、彼女が最も身近にいるターゲット層と合致する消費者だからです。
たとえば広告出稿するチャネルを決める際、彼女とメディアの接点を紐解きます。今は、多くの家庭がYouTubeなどの動画配信サービスと連携したコネクテッドTVを所有しています。子どもがいると、彼女がチャンネルの主導権を握ることはほぼなく、YouTubeが流れっぱなしの状態です。すると、「こうした家庭では、TVCMを打っても目に触れる機会はなさそうだな……」と想像がつきますよね。こうして消費者の行動を想像しながら、要所となるチャネルにしっかりとキャッシュポイントを設けていけば、自然と売上はついてくるはずです。
購入までのスピード命 単品通販LPのA/Bテストはどう実現した?
磯山 「BELMISE」では、一部ページに「BOTCHAN Payment」を導入いただいています。これも、消費者目線で決済の体験向上を考えた結果なのでしょうか。
齊藤 単品通販のLPは、「欲しい」と思った瞬間にすぐに購入できるかが命であるにも関わらず、意外とそこに注力するECカートが少ないと課題に感じていました。エントリーフォームのA/Bテストをしたいのに、表示順を変えられない。システム上バグが起きてしまうかもしれない。どうにかできないかと思っていた時に出会ったのが、「BOTCHAN Payment」でした。
「BOTCHAN Payment」導入後は、「『郵便番号』『番地までの住所』『マンション名』と分かれている住所入力箇所を、一つにまとめたらCVRはどう変化するか」「決済方法を最初に選択したら離脱は減るのか」といった仮説検証がすぐできるので、スムーズに学びが蓄積できて助かっています。