支援側では変革できないもどかしさからバルクオムへ
磯山(wevnal) 西部さんは、バルクオムさんでCRM領域の統括を行っているとのことですが、日々どのような業務に携わっているのでしょうか。
西部(バルクオム) 肩書きの「Domestic SBU」は、国内販売部門を指します。そこでDivision Managerとして、主に自社ECのCRM、カスタマーサービス、データ分析まわりを担当しています。
磯山 バルクオムさんに参画したのは2023年だとお聞きしましたが、それまでもeコマースやデジタルマーケティング、CRM領域のお仕事をされていたのでしょうか?
西部 テレビショッピングを手がける企業で通販領域の経験を積み、一度はコンサルティング側に回りました。そこで多くの企業支援に携わりましたが、支援側の立場だと改善するにも限界があると気づいてしまったんです。
たとえば、新規獲得チームとCRMチームの間に分断が生じるような組織形態になっていたとします。支援側から見ると、BX(ブランド体験)向上に向けて一本筋の通った施策ができるよう、「組織変革をしたほうが良いですよ」とアドバイスはできますが、それを実行するかは各社次第です。こうしたもどかしさを経て、「そろそろまた事業会社側に戻りたいな」と思っていたところで縁があり、バルクオムへの参画を決めました。
「自社ECの顧客を大切に」を形にしたマイレージプログラム
磯山 実際に入社してみていかがですか? 支援側に立ち、様々な企業の課題と直面してきたからこそ見えるバルクオムさんの強みもあると思いますが。
西部 バルクオムでは、製品開発からブランディングやクリエイティブ制作、顧客に製品を届けた後のCRMまで、D2Cブランドとしてすべてを社内で完結できるような組織作りがなされています。
また、国内販売部門の中にビジネス戦略の専門部隊を有しているのも特徴です。このチームは、日常的に各チャネルのマーケティング動向を追い、リサーチした結果を基にバルクオム全体の戦略を立案してくれます。僕が見てきた限り、この社員規模でここまで一貫性した体験作りに専念できるチームがある企業は知りません。だからこそ、強いブランドメッセージや施策展開ができるのだと痛感しています。
磯山 「世界のメンズビューティーをアップデートする」というビジョンと、「メンズスキンケアブランド世界シェアNo.1」というミッションを掲げ、創業から10年で今や海外進出まで実現しています。いわば「成熟期」といえる状況かと思いますが、創業期から変わらぬことや現在直面している課題について、お聞かせください。
西部 製品の展開は「THE BASIC」というブランドコンセプトに基づき、各カテゴリー1製品で勝負するようにしています。絞り込む分、誰が使ってもクオリティーが高いと思えるものを提供する考えは、創業当初から変わっていません。
これまでは、良い製品を作るプロダクトアウトの考え方と、マーケットインの発想を取り入れた認知施策が功を奏して市場拡大に成功してきました。次のステップとして「認知はしているが未購入」の層に対し、どうアプローチしていくかが課題です。アーリーアダプターからマジョリティ層に認知が広がる中で、どうすれば購買のキャズムを超えていけるか。向き合わなければならないポイントの1つと思っています。
磯山 定期コースの顧客に向けた「マイレージプログラム」も好評だと聞いています。こちらについても教えてください。
西部 CRM領域を管轄する立場上、起点となる新規顧客増だけでなく、既存顧客のロイヤル化も大きな課題であることは間違いありません。そこで、バルクオムでは定期コースのご購入金額の10%をマイレージとして還元しています。
こうした施策は定番化していますが、多くの企業は貯まったポイントを購入金額から差し引くといった、値引施策に利用しているケースが多いでしょう。しかし、バルクオムではポイント保有者しか受け取れないオリジナル製品への交換など、ブランド体験向上や愛着醸成につながる設計を施しています。
磯山 それはやはり「自社ECで買ってくれる顧客を大事にしたい」という想いからなのでしょうか?
西部 そうですね。バルクオムの製品は既に自社ECだけでなく、モールやリアルチャネルなど、いろいろな場所で手に取れますが、D2Cブランドとしてはやはり「直接交流できる顧客」を最も大事にしたいと思っています。そのため、自社ECの定期コースが常に最安値であり、充実した顧客体験を享受できる手段であるよう設計しています。マイレージプログラムは、その体験をより深みあるものにする重要な取り組みです。