永続するブランド作りには「人」視点での配慮も欠かせない
磯山 最後に、ECHさんが運営する各ブランドが顧客にとってどんな存在でありたいか、ブランドを通して作り上げていきたい世界についてお聞かせください。
井関 これまで同様、今後も突飛なことをするつもりはありません。繰り返しになりますが「永続するブランド作りを極めていきたい」。これに尽きます。時代の変化とともに顧客へアプローチする方法は変わるかもしれませんが、本質はいつまでも変わらないはずです。経営上の数字を追いかけること、最新のテクノロジーを理解し駆使することも大切ですが、当社は「人にしかできないコミュニケーション」も重視していきたいですね。
たとえば、ブランド担当者宛に顧客から手書きのお手紙をいただくことがありますが、当社は手書きでいただいたものにはきちんと手書きでお返しするようにしています。また、コスト削減の観点から近年サプリメントなどサイズの小さな商材の配送は、ゆうパケットやネコポスなどポスト投函型の手段を選ぶことが主流になりつつありますが、当社は切り替え前に既存顧客1人ひとりに連絡を取り、了承を得てから配送方法を変更しました。コンプレックス商材を扱う場合には、こうした細やかな配慮も大切です。
長くブランドを続けるには、効率や費用対効果だけでなく「丁寧さ」も欠かせません。経営面ではもどかしさを感じる瞬間もないとは言い切れませんが、ECを中心としてビジネスを進めるからと言って効率性に振り切るのではなく、長く続けたいからこそ「人対人のコミュニケーション」には真摯に向き合わなければならないと考えています。
磯山 顧客としっかり向き合い、関係を維持・継続させたいと考える姿勢は、「BOTCHAN Keeper」の開発時にも伝わりました。同サービスは、ECHさんから「顧客の離脱を防ぎたい」「人の力だけだと限界があるが、悩んでいる顧客に対して機械的なアプローチだけでなく、何かできることはないか」と相談をいただき、機能拡張する形で生まれたものです。すでに存在するサービスを「どう使うか」だけでなく、「顧客にとってより良い方法がないか」と常に考え、外部パートナーとも思いを共有しながら形にしていく。こうした姿勢は、当社もたいへんリスペクトしています。
wevnalも、「BOTCHAN」の提供を通じてさまざまなブランドの声を耳にしていますが、成功するブランドには「真摯さ」という共通項があります。「良質な体験を顧客に提供したい」と日々改善を進める皆様に向け、テクノロジーで代替できる部分は「BOTCHAN」を通して手段を提供し、かゆいところに手が届くような支援を続けていくのが当社の役割だと考えています。ECHさんのように、自社だけでなく支援するブランド、顧客の「三方よし」が成立し、かかわる誰もが幸せになる形を導き出すことで気持ちの良いビジネスを今後も作っていきたいと思います。
井関 「三方よし」に加え、私は「個人・ビジネス・商品すべてに対し、化学反応を起こせるかどうか」も重要ととらえています。ECHを立ち上げてから、2011年の東日本大震災、直近のコロナ禍と事業存続の危機に何度も直面してきました。そこで学んだことは「フィーリングが合う人としか、長く取り組みを続けていけない」ということです。節目節目で苦しいこと、考えなくてはならないことと向き合い、私の中で「家族」「ECH」「友人」の3軸が重要であると気づきました。今はこの3軸を守るため、そしてそこにかかわる人々にもっと喜んでもらうため、次のステップに向けた取り組みを始めようとしています。ECHとして未経験のことにも挑戦したいと思っているので、今後もご期待ください。