前編はこちら
とにかく言語化してウェブ上に情報を置く 中小ECの生成AI攻略法
森野 AIに聞くユーザーが増えると、商品数や閲覧数の多い大手ECサイトはAIにも拾われやすそうですが、中小のショップが勝ち筋を見出しにくくなってしまうのでは、と感じます。これまでのECの広がりは小さなショップにもチャンスがあったからだと思うのですが、この流れはチャンスとリスクどちらに働くのでしょうか?
河野 両方あると思っています。重ねてになりますが、AIは「言葉の連想」で動いています。一方で「ガードレール」の概念もあって、ファクトがはっきりしないものやリスクのある内容は避けるようにできているんです。なので、どうしても社会的に信頼評価の高い大企業や有名ブランドの情報を優先して出す傾向が強くなっています。これは信頼度を数値化して、安全側に寄った回答を出すAIの仕組み上、仕方のないことです。
森野 信頼できない情報ばかり出してしまうと、AIそのものが使われなくなってしまいますからね。
河野 ただ、これを逆手に取り、情報をしっかり整理して正確に出せば中小のショップでもAIに拾われる可能性を生み出せます。他の商品にないオンリーワンの特長があれば、AIはきちんと理解してくれますから。なので、冒頭の話に戻りますが、これからは「上位を狙う」ではなく「誠実に正確な情報を出す」ことが重要になっていくと思います。
森野 AIへの質問だと、質問の意図や文脈によって表示結果が変わりますから、これまでの勝ちパターンが崩れる可能性があるということですね。順位の概念がなくなることで生まれる新しいチャンスはありそうです。
河野 たとえば、「渋谷 そば屋」というキーワードで上位表示を狙い、渋谷でそばを食べたい人にリーチするのは至難の業ですよね。個人店は順位争いに参加するのすら困難ですが、AIで情報を探す人は「今渋谷にいて、おろしそばが食べたいんだけどおすすめは?」と聞くかもしれません。
そこで、あらかじめ「渋谷でおろしそばに力を入れている創業100年のお店です」とグルメ情報サイトなどに記載しておけば、AIが情報を読み取ってユーザーの希望に合致するお店として提案してくれる可能性が生まれます。こういった例を挙げると、「自分のお店やブランドを言語化してどれだけウェブ上に情報を置けるか」が差別化の要素だとおわかりいただけるのではないでしょうか。
AI時代は、きちんと情報を出せば拾われるチャンスを増やせるので、短絡的なテクニックやハックでどうにかする時代ではなくなると思います。メディア露出やプレスリリースの作成、SNSの情報発信などの積み重ねが評価される世界になっていく。これはAI時代の最もポジティブな点だなと感じています。
