年間100万SKUペースで商品数を拡大 選ぶ難しさが課題に
──多数ある実店舗が強みのようにも思えますが、EC事業を強化する理由を教えてください。
畑中 一つの売り場だけでは、購買が完結しない時代だからです。
当社は、2003年に「ビックカメラ・ドットコム」を開始しました。昔のいわゆる「通販」は、非常にシンプルだったんです。在庫があって、インターネットがつながれば商売が成立する。競争力は、配達の速さと価格がすべてでした。Amazonのような大手ECプラットフォーマーも、この戦略で成長してきたように思います。
しかし、この数年で状況は大きく変わりました。SNSが登場したことで、お客様はあらゆるチャネルから情報を収集するようになっています。たとえば、人から「このラーメン屋が美味しいよ」と教えてもらったら、昔なら次の日には食べに行っていました。今は、すぐに検索して口コミを見てしまう。評価の低い口コミが一つでもあると、行くのをためらうことさえあります。情報収集が便利になった反面、購買までの選択のストレスが非常に大きくなっているんです。そんな今だからこそ、“eコマースを再定義するタイミング”だと考えています。
当社は、家電だけでなく多種多様な商品を取り扱っている点で、既存のECプラットフォームと似ているかもしれません。一方で、我々の最大の強みは、実店舗での「接客」で得た顧客理解のノウハウです。これは、お客様に寄り添って直接向き合ってきたからこそ得られた、他社には真似できない部分。このノウハウをビックカメラ・ドットコムに活かすことができれば、EC事業はどの事業よりも成長する可能性があると考えました。

瀧澤 ビックカメラ・ドットコムでは、年間100万SKUのペースで商品掲載数を増やしています。選択肢があるのは良いことですが、重要なのはお客様が本当に求めている商品があるかどうか。せっかく多くの商品を掲載しても、ファーストビューで「ここには欲しい商品がない」と判断されては、もったいないです。
家電販売店ですから、冷蔵庫やテレビといった大型家電の情報はかなり充実しています。お客様が比較しやすいように、似たような商品の特徴を一覧で確認できる機能は、EC上にもすぐに反映できる部分です。一方で、日用品やサプリメントなどはまだ情報が不十分なケースも多く、課題も残っています。今後は家電のレベルまで、各商品の情報量をしっかり引き上げていきたいです。
畑中 商品掲載数を増やす裏側には、掲載しただけで終わるリスクもあるんです。情報拡充が間に合わず、画像だけが載っているような状態では、お客様の離脱につながります。実店舗なら口頭での接客でカバーできますが、ビックカメラ・ドットコムでどうやってそれを実現するか考え続けてきました。