AIに自社の商品やサービスを紹介してもらうには?
森野(運営堂) 今日は、「ECとAI」というテーマで河野さんとお話をしていきます。
ECってこれまでは「アクセス数×転換率×客単価」で考えるのが当たり前でしたよね。しかし、AIが入ってきて、もうその式が成り立たなくなりつつあると思っています。数字で追う発想だけでは厳しくて、AIによって、購買の流れや判断の仕方そのものが変わってきている印象です。
河野(MMOL Holdings) 従来はSEO(Search Engine Optimization)で検索上位を目指して「人を1ヵ所に集める」のが一般的なアプローチでしたが、このやり方・考え方はこれから少しずつ変わっていくと思っています。
「AIO(AI Optimization)」という言葉も浸透し始めていますが、「これからはAIでどう表示されるかが大事になる」かというと、必ずしもそうではないんですよ。AIは一人ひとりに合った情報や商品を出すので、「みんなにとっての1位」はそもそも存在しません。全員に同じ情報を出す仕組みはAIと言えないので、現状の「1位を狙う」という仕組み自体がだんだん成立しなくなるんだと思います。
森野 SEOは人や場所によって検索結果が変わることがあるとはいえ、全体としては同じような結果でしたよ。それがAIになるとパーソナライズというか、過去の対話履歴や問いで回答が変わっていくということですね。
河野 AIが商品やサービスを紹介する際に、思っていない形で紹介されてしまわないよう、AIがきちんと理解できる形で正確な情報を渡しておく。そのための“情報整理”という下準備がこれからはとても重要になります。
だからといって「SEOをやらなくていい」という話でもなく、検索時に上位に表示される工夫はやはり必要です。実店舗の立地同様、人通りが多いところに店を構えていたほうが見てもらえる確率が高いからです。
「これをやれば上がる」という単純な時代ではなくなり、手間もかかるし、難しさも増しています。その代わり、丁寧に積み上げていけばきちんと評価されるようになっているんですよね。
森野 AIは種類も多いですし、どんどんアップデートされていきます。有料版だと前の会話を覚えていることもあるので、「前にこれを探していたから次はこれかな」と提案してきたら、使う人によって出てくる情報もまったく違うものになりますよね。そう考えると、SEOのように自社の商品が必ず出てくる状態を作るのは難しそうです。
河野 そもそも、現時点でインターネット上にすべての情報を正しく発信できているブランドは少ないはずです。商品の説明一つ取っても、原材料やこだわり、背景のストーリーまできちんと言葉にまとめて出せているかと聞かれて、「完璧だ」といえる企業は少ないでしょう。
情報が不足していると、AIが勝手な推測をしてありもしない情報を付け足しかねません。そういったことが起きないよう、きちんと自分たちで情報を整理して抜けや漏れがないように発信するのがまずは大事です。
森野 EC担当者は忙しいですし、「商品ページを作るのが面倒」「どう説明すれば良いのかわからない」「聞いてくれた人に説明します」と、どうしても言い訳をしてしまいがちです。でも、AIは探しに来ても問い合わせはしてくれないので、勝手に推論していわゆるハルシネーションになってしまうということですね。
河野 そうなんですよ。AIは頑張って考えてしまうがゆえに、情報がないと間違った答えを導き出しかねません。これは注意しなければならないポイントだといえます。
