SQLへの理解は触れながら深めれば良い 大事なのは顧客を見ること
続いて上田氏は、各チャネルのデータをつなぐKARTE Datahubの活用について触れた。
「KARTE Datahubを使う前は、顧客を細かくセグメントすることなく一律でポップアップを表示している状態でした。しかし、導入後は店舗での購買情報や顧客の基礎情報などとの統合が可能になり、パーソナライズした体験を提供できています」(アダストリア 上田氏)
現在のドットエスティでは、主にセグメント作成のためにKARTE Datahubを活用し、顧客の保有ポイントや配信情報に応じたポップアップの出し分けを実施している。
「KARTE DatahubはSQLを必要とするため、一見すると難易度が高いと思われるかもしれません。しかし、テンプレートを活用すればSQLがわからない担当者でも分析を実行することができます」(アダストリア 上田氏)
ここで福澤氏が上田氏にKARTE Datahubの活用を始めたきっかけと背景にあった課題について質問を投げかけた。
「ECだけの情報では施策展開に限りがあると感じていました。そこで最初に取り組んだのは、クーポン保有者への訴求です。やりながらSQLについて理解を深め、よりセグメントされた接客ができる可能性を感じました」(アダストリア 上田氏)
上田氏はさまざまな試行錯誤を重ねた結果、見えてきた成功・失敗のパターンについても次のように言及した。
「やはり、成功するのはクーポン保有者に向けたポップアップ表示など、顧客のニーズをしっかりと読み取った接客です。これまで顧客から『クーポン発行に気がつかなかった』といった声が多数寄せられていたことを受け、KARTEでの解決を目指して施策を実施しました。その結果、クーポン利用者は前年比140%を記録し、顧客満足度の向上と売上の最大化に成功しました。
反対に失敗した施策は、行動データに基づいた配信の最適化です。顧客により良い情報を届けるため、『もっとも訪問回数が多いチャネルだけに配信する』という設定を行ったところ、収益・流入が大きく減少してしまいました。理由としては、『LINEを見てからアプリを開く』『メルマガを見てからアプリを開く』といったように顧客は複数チャネルを並行して見ているためです。顧客の行動を理解しないままセグメント化を行うのは危険だという学びを得ました」(アダストリア 上田氏)
上田氏はドットエスティが目指すのは「ウェブ上で十人十色の体験ができる世界」とした上で、このように今後の展望を語った。
「当社には、実際に顧客の反応を見ながら1人ひとりに最適な接客を提供する店舗スタッフという財産が存在します。彼らの接客術を徹底的に分析し、リアルの接客をウェブ上でも表現できるようにしていきます」(アダストリア 上田氏)
ここで福澤氏が「KARTE運用におけるマイルール」を聞いたところ、上田氏は次の3点を挙げた。
- 設定に4時間以上かかる接客は作らない
- 社内で決めたKARTE用途以外には手をつけない
- 大通りから攻める
1. について、上田氏はポップアップの見栄えやセグメント設定に時間をかけていた導入当初を振り返りながら、こう続ける。
「時間をかけて作った接客を稼働してもリフトした数値が105%であるなど、費用対効果が見合わないことが多く、時間と成果は必ずしも比例しないことを実感しました。そこで、まずはできることから始めようと考えを切り替え、簡単なポップアップから始めることにしたのです。もし成果が出ればより改良を加える、もし思うような成果につながらないのであればそのシナリオをやめて別のシナリオに切り替える。こうした考えを持ち、今は『4時間以内に必ず作り終える』と決めています」(アダストリア 上田氏)
2. については、KARTEの機能が充実しているがゆえに、「自社の目的に合ったウェブ接客を実施しなければ『顧客をサポートする』という本来の目的からそれてしまうから」と述べた上田氏。3. に関しては「運用過程で策定したルール」とした上で、こう説明した。
「3. は、最初に大きなセグメントでの施策にトライし、細分化を進めるやりかたです。たとえばクーポンを保有する顧客に対して接客を展開する際に『どのクーポンを保有しているか』までは絞り込まず、『クーポンを保有している顧客全員』に対して展開してみる。こうすることで、接客そのものの有効性を検証できました。今は成果が出た施策に対して細分化を行い、効果をさらに高めていく形で進めています」(アダストリア 上田氏)
上田氏は、最後にウェブ接客実施に向けた考えかたのヒントを次のように提示し、セッションを締めくくった。
「良い接客を生み出すには、『どんな接客を実装しよう』から考えるのではなく、『そもそも何のためにウェブ接客を導入したのか』『どんな世界を作りたいか』から振り返ることが重要です。顧客目線で施策を考え、より良い接客体験の創出につなげましょう」(アダストリア 上田氏)
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