優先順位を設定し、課題を絞り込む
ここまで大きく整理したところで課題を細分化。さらに、それぞれの課題について「重要度」「効果」「難易度」「緊急度」といった4つの指標で優先度を設定した。鈴木氏によれば、この優先度の基準はそれほどシビアに決める必要はないが、必ず各指標で数字をプロットしていくことが重要だという。これにより、各指標の合計で機械的に課題の優先順位が決まってくる。
次の段階では優先順位の高い課題に絞り、「入会」「1年目会員」「2年目以降会員」などの顧客ステップごとに現状の施策を書き出していった。これにより、それまでの施策の重複や不足しているところを明確に洗い出すことができたという。
「ここでようやく整理がついて何をするのか決めることができ、初めてシナリオ作りに着手できる状態になりました。かなり手間はかかりますが、この準備は絶対必要なものと考えてください。これをやらないで施策を設計するのは、細い幹に巨大な実をぶら下げているようなもので、すぐに倒れてしまいます。自分はもちろん他部署の人も、あるいは担当が変わっても、『何のために何をやっているのか』を誰もがわかるようにしておくことが大事です」(鈴木氏)
詳細設計から施策実行、PDCAの継続へ
この先は、詳細設計を経て施策実行という流れになる。今後、パルコで実施予定の施策例として、鈴木氏は次のふたつを簡単に紹介した。
ひとつは、カード保有者かつ非アプリ会員向けにアプリ登録を促進するための施策だ。オファーを4種類(うちひとつは、効果測定基準用の「何も送信しない」)用意して出し分け、効果の高いオファーを調べるという。オファーを送る手段としては、まずメールを送信して、未開封の顧客にはDM+フォローメールを、開封しても反応しなかった顧客にはさらにもう一度DMを送るように設計している。
もうひとつは、カード保有者のうち初回購入から90日以内の顧客を対象とした、リピート(2回目購入の)獲得のための施策だ。ECでは一般的に重視されている施策であり、店舗購入の場合でも90日以内にリピート購入した顧客のLTVは非常に高いのだが、これまでパルコではあまり行われてこなかったことがわかり、実施することになった。こちらも複数のオファーをテストし、メールやDMでアプローチする設計となっている。
今後、こうした施策をどのようにインプリメントしていくか協議し、実行するのはさらにその1ヵ月程度先になる見込みだという。
鈴木氏によれば、「今年の秋ごろにはその先の話ができるかもしれません」とのこと。ぜひ施策実行後の成果を聞きたいところだ。