2016年からOMO実現に向け積み重ねたルックホールディングスの道筋
アパレル&ライフスタイル分野を軸に、多角的な事業を展開するルックホールディングス。「IL BISONTE」「Marimekko」「A.P.C.」など運営するブランド名を挙げると、その多彩さがうかがえるだろう。
そんな同社が、ブランドやチャネルを横断して顧客情報を一元管理すべく2016年に導入したのが、メンバーシップ制度「LOOK MEMBERSHIP」だ。統合の背景にあったのは、チャネル・ブランド間のクロスセル促進と、各ブランドに定期的に来店したいと思える仕組みを作り上げる考えだと、西村氏は振り返る。
「店舗だけ・ECだけといった単一のチャネルを利用するお客様よりも、両方を利用するお客様のほうが購入総額が2〜3倍になる傾向があると見えていたものの、当時の店舗では顧客情報を紙で管理し、他店舗での購買状況を把握できない状況でした。
ECサイトと店舗のデータも連携できておらず、お客様がそれぞれのチャネルでどの程度の頻度、どれだけの金額を購入しているかが見えていなかったのです。ロイヤリティの高いお客様に適切な対応ができておらず、大きな課題となっていました」(ルックホールディングス・西村氏)

メンバーシップ制度の導入により、ルックホールディングスは「Marimekkoで商品を購入した顧客にIL BISONTEやA.P.C.のお知らせを送付し、他ブランドにも興味をもってもらう」といったブランド横断型の導線設計が可能となった。その上で、2018年に同社は次なるステップとしてLOOK MEMBERSHIPの会員IDを基盤としたMAの導入を決断する。
「MAツールを比較する際は、『自社ECだけでなく店舗の購買データも取り込めるか』『運用のしやすさや拡張の柔軟性』『QCD(コスト・品質・納期)のバランスが良いか』に重点を置いて検討しました。
シナリオ配信機能が既に実装されているなど、機能面で大手MAツールと遜色なく、コストパフォーマンスも良かったため『EC Intelligence』を最終的に選んだのですが、JavaScriptやHTML・CSSを使ってカスタマイズできる点も魅力的でした。ブランドごとの戦略や描きたい顧客体験に合わせて、柔軟に対応できる可能性を感じたのです」(ルックホールディングス・西村氏)

「近年は、ノーコードで直感的に使えるMAツールも増えていますが、汎用性と拡張性を両立させるにはノーコードとスクリプトを併用する必要があります。この開発思想をくみ取って評価いただけたのは、うれしいかぎりです」(シナブル・曽川氏)
こうして、密な顧客アプローチ基盤を得たルックホールディングスは、OMO実現に向けた施策を一つずつ形にしていった。ここから、代表的な二つの施策を紹介しよう。