コマース領域の生成AI推進 実行部隊として生まれた「生成AIタックル室」とは
2023年10月にヤフー株式会社、LINE株式会社など複数社が統合して生まれたLINEヤフー。「Yahoo! JAPAN」「Yahoo!ショッピング」「LINE」など、古くは1990年代から国内インターネット市場の発展に貢献し、国民の生活に根づく様々なサービスを提供する同社では、生成AIについても早期からキャッチアップし、全社的な活用が進められていたそうだ。
「合併直後に生成AI統括本部が発足し、AIを使った社内業務の改善、各サービスへの生成AI導入支援などといった働きかけが行われていました。しかし、Yahoo!ショッピングなど各サービスへの機能実装、推進は各々に委ねられていたため、実行部隊が必要だと私は考えたのです。そこで、Yahoo!ショッピングの組織内に生成AIタックル室を立ち上げました」

今でこそ、カートベンダーが生成AIを使った機能を提供するなど、EC運営にも活用が定着し始めているが、2024年4月の生成AIタックル室立ち上げ当初は「コマース領域、特に日本国内での事例がほぼ存在しない状態だった」と振り返る市丸氏。生成AIに興味をもつと同時に、Yahoo!ショッピングの運営に長年関わる立場として「事例を早く作り、業界全体の生成AI活用推進に貢献したい気持ちもあった」と続ける。
「トライ&エラーのサイクルを高速に回すため、最初から部署にはせず、『課題に取り組む自発的な集団』として運営を開始しました。エンジニアを中心に興味・関心のあるメンバーが集まり、2024年度には現在提供していないものも含めて、15件の生成AI機能を開発しています。
実践の成果や手応えを踏まえ、生成AIタックル室は2025年4月に正式な組織へと進化しました。今は営業、マーケティングといった職種のメンバーも加わり、Yahoo!ショッピング運営に携わるメンバーの包括組織として機能しています」
自発型組織だったからこそ、とにかく手を動かす・試すを信条に
課題に取り組むことを目的に立ち上げられた生成AIタックル室だが、前例のない中で開発計画を立てるのは当然難しく、「最初はほぼ手探り状態で、できそうなことが見えれば『すぐに手を動かして試してみる』を信条にしていた」と説明する市丸氏。全員が兼務で運営されていた自発型の組織、かつ規模の大きなプラットフォームということもあり、手を動かしながらもYahoo!ショッピングへの実際の機能実装には一定の時間を要したという。
「最初にYahoo!ショッピングに実装されたのは、レビュー内容を軸に生成AIが類似商品をレコメンドする機能です。これは、ユーザーが商品を検討する際の面倒さを減らし、納得感を高めやすくするにはどうしたら良いか考え、形にしました。
ここで得た学びから、生成AIで他商品との比較やレビュー要約をする機能のβ版提供も2025年5月に始めています。こうした機能は、ユーザー体験の向上にきっと寄与するはずです」