社内から「EC強化」という言葉をなくしたい
──「ほんとうにすべらないお箸」など、ヒット商品を多く持つ藤栄ですが、元々は卸売企業として出発しています。どのように事業を成長させてきたのでしょうか。
中島 当社は、主に生活雑貨の卸売りを軸に事業展開をしてきました。2025年で創業80年を迎えます。これまで家庭用品から家具などと時代に合わせて事業変革を重ね、現在は“ライフスタイルの創造”を企業理念に掲げています。
近年は、オリジナル商品の開発やEC販売に力を入れており、特に人気が高いのが「ほんとうにすべらないお箸」です。1,300円~2,000円とお箸にしては決して安くありません。それでも、累計販売数は88万膳を突破しています。
そんなアイデア商品を取り扱っているのが、当社のホールセール事業カンパニーです。年商は約100億円規模で、そのほとんどが卸事業経由となっています。しかし、理想とする売上比率は卸事業80%、プライベートブランド(PB)事業20%。一見少ないように思えるかもしれませんが、この“PB売上20%”を達成するためにEC販売を強化しているところです。

──長年、卸事業で成長してきたにもかかわらず、なぜオリジナル商品を開発されているのですか。
中島 この数年、大手の卸企業・小売企業が買収されるニュースをいくつか目にしました。超優良企業ですら、2年後3年後どうなっているか不明確な時代です。そこで、6年ほど前に「メーカーになろう」と考え始めました。PB強化の一環で展示会に出展する機会も増え、これまで縁がなかった企業とのつながりが生まれています。
取引先を開拓する中で、EC販売の需要は高いと感じました。実は、当社は15年以上前からAmazonに出品しています。今まで社内での優先度が高くなかったのですが、この数年でEC活用は一般化しましたよね。今後の伸びしろを踏まえると、注力しない手はありません。
1970年代、80年代の成長期ならまだしも、今は当社も創業80年。事業変革してきたとはいえ、40年前と比べると現状維持となっている部分も多いです。競争が激しい中、それで良いのでしょうか。生き残れないかもしれない。そんなネガティブワードが社内で出たのは、私が知る限り初めてです。
今は社内で「EC強化」が叫ばれています。いいかえると、当社のEC事業はまだまだ弱いということ。私は、そもそもこの言葉が社内で使われないようにしたいです。他社と比べると、当社は最低でも10年遅れています。それを取り戻すために、すべて内製でやろうとする考え方をやめました。今は、EC運営を支援する株式会社ACROVEに協力してもらっています。
社内を見渡しても、EC担当者は孤独な仕事です。課題を共有し合える関係性が作れたのも、外部と手を組むメリットでしょう。