現状を可視化して課題を整理し、戦略・戦術との整合性もとる
鈴木氏はまず、課題の可視化と整理のために、次のようなベン図を作成した。
(3)がPARCOカード保有者全体で、そのうちパルコ内利用が(4)。(6)はアプリ(POCKET PARCO)会員だ。アプリにはクレジットカード(他社カードを含む)を登録できるので、(4)PARCOカード保有者と(6)アプリ会員が重複する部分もある。
図中の矢印は、大分類レベルの課題を表す。たとえば、Aは「PARCOカード保有者を増やす」、Bは「アプリ保有者を増やす」、Cは「PARCOカード保有者のアプリ会員登録を増やす」、Dは「アプリ会員のPARCOカード保有者を増やす」ということになる。
また、(1)~(10)それぞれのグループごとに、金額、来店者数、登録者数など、取得可能な数値を洗い出した。これにより、現状の各グループの規模や、施策を実施した場合に期待できる効果などが見えてくる。
続いて行ったのは、会社全体の方針と課題の優先順位などにズレが生じないように、戦略・戦術との整合性を図ることだ。最終的なゴールは、パルコ全体の売上・利益を最大化すること。その実現に向けた当時CRM担当であった野中氏の戦略は、パルコ顧客の行動把握のためにID登録客を最大化することとした。戦術としては、PARCOカード顧客数を最大化することと、POCKET PARCO顧客数を最大化すること。さらに、「カードとアプリの重複を最大化すること」も含めた。
「カード保有者にはパーミッションを得ているのでDMやメールでアプローチできますし、アプリ会員には常に持ち歩いているスマホに対してプッシュ通知でいつでもメッセージや各種情報を送ることができます。両方使っていただいているお客様は幅広いコミュニケーション手段が使えるため、利用額を伸ばせる可能性も高くなります。最初にターゲットを可視化したことで、この重複する層を広げていくことが重要だという認識が社内で共有できました」(野中氏)