「タイミング」を意識したコミュニケーション設計が重要
コミュニケーションの4大要素といわれる「ターゲット」「タイミング」「クリエイティブ」「オファー」の中でも、鈴木氏は特に「タイミング」を重視している。
「同じクリエイティブでも、タイミングを最適化することで、効果が大きく上がります。昔は難しかったのですが、今はデジタル技術の進歩によってユーザー行動などのタイミングが容易に把握できるようになりました。せっかくデータドリブンでマーケティングに取り組むなら、タイミングを意識したコミュニケーション設計をするべきです」
ユーザーが購買(コンバージョン)に至るまでには、「認知」「興味」「検討」などの段階を経る。まず、コミュニケーションしようとしているユーザーは今、どのステージにあるのかを把握すること。そして、現在のステージから次のステージに遷移させるために有効な施策を考えることが重要だという。
「あらゆる施策は、ユーザーを次のステージに向かわせるために行います。その手段はデジタルかアナログかにこだわる必要はなく、もっとも安くて効果が高いものを選べばよいだけです」
PARCOカードの利用最大化に向けた取り組み
デジタル、アナログを含めたマーケティング施策を実践する際には、何から始めればよいのだろうか。鈴木氏によれば「施策をいきなり作り始めるのはダメ」で、施策設計に入る前に全体を俯瞰して、ビジネス課題や購買プロセスの整理、施策案の洗い出しなど入念な準備が必要だという。
セッション後半では、特にこの前段の作業の重要性を示す事例として、パルコ グループデジタル推進室デジタル推進担当 部長(※プロジェクトスタート時は都心型店舗グループ本部CRM担当 部長)の野中健次氏を交え、現在進行中の「PARCOカードの利用最大化」に向けた取り組みが紹介された。
パルコでは、顧客情報を取得できるタッチポイントとして、クレジットカードの「PARCOカード」、公式スマホアプリ「POCKET PARCO(ポケットパルコ)」、ECサイト「PARCO ONLINE STORE」を持つ。3つの中で母数がもっとも多いのが、有効会員数約200万人のパルコカードだ。
「PARCOカード保有者の中でも年間購買額が多いのは、日常的に食品の購入などで使っていただいている比較的高齢のお客様です。メールやアプリなどデジタルなコミュニケーションではなかなかアプローチしづらいという課題があり、鈴木さんにサポートをお願いすることになりました」と、野中氏は経緯を説明する。