生活者と直接コミュニケーションがとれる接点を作る
━━まずは、今回TikTok Shopでの販売に取り組まれた「メディキュット」というブランドについて教えてください。
岡部 メディキュットは、イギリスの医療用ストッキングをルーツに持つ段階圧力ソックスのブランドです。1997年の日本誕生以来、20年以上にわたり日本人の脚に合わせた製品開発を行ってきました。定番の「寝ながら」シリーズに加え、最近では外出時やルームウェアとして着用できる製品も展開しています。
また、2023年には男性用製品を、今年の9月にはシニア向け製品も発売しました。これまでは「若い女性向け」というイメージが強かったのですが、高齢化社会が進む中、「いつまでも元気に歩きたい」と願うシニア層や男性も含め、全世代の脚の健康をサポートするブランドへと進化しています。
レキットベンキーザー・ジャパン株式会社
マーケティング本部 アシスタントマネージャー
岡部 未来氏
━━なぜ今回、新たな販売チャネルとして「TikTok Shop」を選ばれたのでしょうか。
川端 背景には、グローバル市場での大きな潮流がありました。レキットベンキーザーの海外拠点、特に中国やASEAN地域では、すでにソーシャルコマースが爆発的に伸びており、売上比率の数十パーセントを占めるまでになっています。そうした状況下で、日本でもTikTok Shopがローンチされるという情報が入ってきたため、「自然な流れ」として参入が決まりました。
大谷 ブランド視点で言えば、メディキュットのメインユーザー層である20代~40代の女性と、TikTokというメディアの親和性が非常に高いと判断したことが理由です。
ブランドとしてお客様との直接的なタッチポイントが少なく、繋がりが希薄になりがちだった課題を、TikTok Shopを通じたダイレクトなコミュニケーションで解消したいという狙いがありました。
フォロワー0からでも「売れる配信」は作れる
━━TikTok Shopの立ち上げにあたり、多くの企業が物流や在庫連携のシステム面でつまずくケースが見られます。御社はどのようにクリアされましたか。
川端 おっしゃる通り、メーカーにとって物流・在庫周りの連携は大きなボトルネックになりがちです。しかし今回は、非常に柔軟に対応いただけるリテールパートナー様と連携できたことで、そのハードルを感じることなくスムーズに出店まで漕ぎ着けることができました。在庫切れを起こさないよう、都度ライブごとの販売見込み数を共有し、連携を図っています。
レキットベンキーザー・ジャパン株式会社
営業本部 Eコマース部 アシスタントマネージャー
川端 大輝氏
━━運用戦略については、どのように設計されたのでしょうか。
仙波 TikTok Shopは、ショート動画やライブ配信など、集客手段が多岐にわたるのが特徴です。そのため、最適なフォーマットとアカウント運用戦略については、レキット様と密に議論を重ねました。
大谷 その中で、セプテーニさんからライブ配信と広告を組み合わせたTikTok Shop活用をご提案いただきました。メディキュットでは、過去に他プラットフォームでライブ形式での販売実績があったことも後押しになり、ライブ配信への挑戦を決めました。
仙波 今回は、TikTok Shopで新たにブランドアカウントを立ち上げ、そこを資産として育てていく方針をとりました。当初、アメリカやイギリスの市場トレンドを参考に、「ショート動画」をメインに据えて集客・販売を行う計画でしたが、TikTok Shopの立ち上げ初期は、相性の良いクリエイターの発掘の難航や、市場全体におけるショート動画経由のGMV比率が低いことから、ショート動画は中長期的な集客の柱と考えつつ、まずは市場の熱量が高まってきていた「ライブ配信」に舵を切りました。初回配信で一定のGMVが創出できたため、詳細な分析を通じて改善指標を特定し、即座にPDCAを回し始めました。
━━フォロワーが0の状態から、どのように集客し、購入へ繋げたのですか。
川端 初期段階では、どのコンテンツがアルゴリズムに評価され、ブーストがかかるのかが見えていませんでした。そのため、「広告で集客し、ライブ配信で購買意欲を高める」という役割分担を明確にしました。広告配信によってライブ配信に人を呼び込み、ライブ内のコンテンツ力で購入まで導くという設計です。現在では、コンテンツの質が上がりアルゴリズムにマッチするようになったことで、極論を言えば広告を打たなくても自然と人が集まる状態に近づきつつあります。
仙波 我々セプテーニは、TikTok Shop Partner(TSP)として、「ライブ配信単体」の支援ではなく、TikTok Shopのアルゴリズムを踏まえた包括的な設計を行いました。 具体的には、最適な広告プロダクトの選定によるブースト、視聴者とのインタラクションを最大化する「モデレーション」、そして時間帯やテーマごとに細かく最適化した台本構成です。単に「人を集める」だけでなく、広告で集客したユーザーをライブ内のコンテンツ力で逃さず購入まで導く、この「売れるための設計図」をゼロから構築しました。
━━「売れるコンテンツ」を作るために、どのような検証を行いましたか。
川端 トーク内容やオファーの出し方について、毎回A/Bテストのような形で検証を繰り返しました。当初は、社員が出演している強みを活かし、熱量の高い「詳細な商品説明」に比重を置いていました。しかし、TikTokユーザーが求めているのは「どれくらいお得なのか」という直感的な情報でした。そこで、まずは「お得訴求」を前面に押し出し、商品詳細はコメントで拾ってダイレクトに答える形に切り替えたところ、売上のボリュームが安定して稼げるようになりました。
安藤 「お得」と言っても、単に割引率を10%から15%に上げるだけでは、ユーザーはお得だと感じません。配信回数を重ねる中で、「今ここで買うと抽選でプレゼントが当たる」「このセットについてくる」といった、ライブ配信ならではの「限定感」や投票やルーレットのような「ゲーミフィケーション要素」を取り入れ、買い物をエンターテインメントとして楽しんでもらう設計が重要だとわかりました。
また、企画段階から「視聴者がコメントしたくなる仕掛け」を徹底して盛り込んでいます。モデレーターがコメントに対して即座に、かつパーソナルな対応を行うことで視聴者の熱量を維持し、商品のメリットを具体的な利用シーンに落とし込んで語る。こうした「コメント返し」の質が購買導線への強力なフックになることもわかりました。
