投稿の継続には社内外の協力が不可欠 気づかされたエピソード
ブランドの立ち上げ時、社内から「本当に需要はあるのだろうか」との声があがったという「アデリアレトロ」。桐本氏は「Instagramを通じて、過去の商品を復刻するメリットやファン創出の効果を実感している」と語る。
「当ブランドのInstagramアカウントは、ファンの方々と直接的なコミュニケーションを取る場に成長しました。その事実は、社内に大きなインパクトを与えていると感じます。運用が軌道に乗るまでは、実際のファンに声を聞く機会が少なく、売上データから需要を分析していました。現在は、使用する方の意見をInstagram上で拾い上げ、それにもとづいて商品開発を進められるため、ファンが求める新商品を生み出せます」(桐本氏)
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一方、カリモク家具の朝岡氏はInstagram運用のメリットとして“社内の連携強化”を挙げた。たとえば、新商品の開発や新たな販促企画といったプロジェクトの初期段階で、Instagramによる告知施策が話題に上がるようになっている。
「Instagramをはじめ、SNSで投稿を行うには材料が必要です。社内外からの情報収集が重要となります。そこで、まずはカリモク家具のニュースを広く伝えるために、ウェブサイトだけでなくInstagramでも発信したい旨を各プロジェクトの担当者にアピールしました。今では、Instagram運用のサポーターや社内の関係者、木材の供給元から情報提供の協力を得られています。材料が増えることで、発信できるコンテンツの厚みが増していると実感しました」(朝岡氏)
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情報発信において、社内外を巻き込んだ情報収集や協力体制の構築は欠かせない。しかし、新たな取り組みとして始める際に、なかなか社内の理解を得られず優先度が下がってしまうケースがあるのも事実だ。また、運用担当者の変更にともない投稿が滞るアカウントも存在する。軌道に乗るまで投稿を継続する推進力が必要といえるだろう。
ここで、朝岡氏から桐本氏に向けて「どのように社内外と連携しているのか」と、質問が投げかけられた。それに対して桐本氏は、石塚硝子の社員に協力を仰いだエピソードを共有した。
「商品開発の裏側を紹介するショート動画を制作した際に、品質保証部門の社員の方に出演を依頼したことがあります。その方が当日、紙で手作りしたぐるぐるメガネを持参して『これをかけたら検査員らしく見えますか』と、とても楽しみながら参加してくれたのです。それまで、ショート動画に出演するのはほとんど私のみでしたが、様々な方に協力してもらえば、より楽しく魅力的なコンテンツが作れると気づきましたね」(桐本氏)
それぞれの良さを生かしながら、ファンとのコミュニケーションを取っている「アデリアレトロ」と「カリモク家具」。セッションの最後に、桐本氏と朝岡氏は参加者に向けてこうメッセージを送った。
「ぜひ、Instagramを含めてSNS運用を担当している皆さんには、誰かが見て『楽しい!』と思えるコンテンツ作りを目指してほしいです」(桐本氏)
「SNS運用は一人ではできません。企業やブランド全体で行っていくものだと知ってもらえたら嬉しいです」(朝岡氏)