実測に時間がかかるLTV 日々の広告運用で活用するには?
では、EC事業者はLTV運用によって、どのような状態を目指せば良いのだろうか。菊池氏は、定期購入型ECと単発購入型EC双方の視点でこう説明する。
「定期購入型ECでは、まずサンプルの使用やトライアルキットの購入から、どの程度の新規顧客が本商品を購入しているかを見ます。その後、同じ顧客が一定期間でどの程度リピート購入しているかを分析する流れです。一方、購入者に既存顧客が多く含まれる単発購入型ECの場合は、購入者の新規/既存判定を行いながら、新規顧客に絞ってリピート購入の回数を確認します」
ここで「一定期間が経過しなければわからないLTVを、日々の広告運用に活用できるのか」と疑問を抱く人もいるだろう。菊池氏は「過去実績から予測が可能」と話す。
「同じキャンペーンの過去実績から、どの程度LTVが伸びるか予測できます。そのデータを用いて算出した『予測LTV』を、日々の広告運用の指標とすることで、長期的視点のLTVを、日々の短期的な広告改善にも活用できます」
こうしたLTV運用のポイントを解説すると、菊池氏は「Shirofune」を導入して広告運用を改善した成功事例を二つ紹介した。
新規顧客にフォーカス 半年で収益が広告費の1.5倍に
一つ目が、パーツ・部品をEC販売する企業の事例だ。同社は以前、広告からの流入のうち、新規顧客と既存顧客の割合が把握できておらず、広告効果を正確に測定できていなかった。そこで「Shirofune」を導入し、LTV運用に取り組み始めたという。
「Google アナリティクスのアトリビューション分析からわかる各媒体・キャンペーンの効果と、ECカートの顧客データを連携し、新規顧客の動きにフォーカスする体制を整えました。その結果、広告からの流入の多くが既存顧客であり、新規顧客の割合は23%ほどであると判明したのです。また、広告配信していた媒体Aと媒体Bのうち、媒体Aのほうが新規顧客のROASが高く、LTVも伸びているとわかりました」
同社では、媒体Aへの予算配分を増やし、新規顧客へのアプローチを強化。その結果、LTV運用を開始してから3ヵ月で広告費の100%を回収できた。さらに、半年後には広告費の1.5倍の収益を得られている。
手作業の分析を自動化 LTV効率の可視化も実現
もう一つの事例である健康食品通販企業は元々、広告効果の測定ツールから得られたデータと、ECカートに蓄積された新規顧客のデータを照らし合わせ、新規顧客のCPAを算出するなど、できる限りの細かな分析を行っていた。しかし、スプレッドシートでデータを管理していたことが、分析の工数増加やミスを誘発。また、工数負担の大きさからLTVの算出までは行えず、新規CPAの分析がキャンペーン単位にとどまっているなど、粒度が粗い点も課題だった。この状況を改善するため同社が実施したのが、「Shirofune」を通じた集計の自動化と予測LTVの算出だ。
「結果的に、手動でデータ集計する工数を削減でき、スムーズにLTVの把握が可能となりました。現状の広告配信では、8ヵ月後に広告費の90%が回収できているとわかっています。広告グループ以下の粒度で細かく広告予算を最適化できるようになり、成果の改善も見られます」