EC事業者の当たり前=ユーザーの当たり前ではない
深田氏は、前出のCVR改善時に理解すべき3つのポイントについて、さらに詳しく解説を進める。まず紹介したのは、「ユーザーは思いもかけないところで離脱している」ことに対する改善法だ。
ユーザーが離脱するフリクションがどこにあるのか、EC事業者にとって予測しづらいケースは多い。ここで深田氏は、「EC事業者にとっての当たり前が、ユーザーにとっても当たり前とは限らない」と指摘した。
事例:ユーザーのつまずき行動に着目
最初に深田氏が紹介したのは、生鮮食品を扱うECサイトの事例だ。同サイトでは、「ハンバーガーメニューで展開する商品一覧を閲覧するユーザーが少ない」という課題を有していた。ページの左上部に3本線でハンバーガーメニューを設置し、クリックすると商品一覧が展開・表示されるという一般的なUIであったが、Sprocketがユーザー行動を分析したところ、ハンバーガーメニューをクリックしたことがないユーザーが想像以上に多いことがわかったと言う。
「そこで、該当箇所に『ココをクリックすると商品詳細が見れますよ!』とポップアップを表示する仕様に変更したところ、購入完了改善率が125%になりました」(深田氏)
事例:購入・申込検討時の不安を払拭
とくに初回購入検討中のユーザーは、購入直前で離脱してしまう「カゴ落ち」が多い。Sprocketが調査したところ、そのフリクションは送料や支払方法、お届け日、会員登録が必須かどうかなど、細かい疑問や不安が解消されないためだとわかった。
「ユーザーの知りたい内容がもともとFAQのページに記載されている場合でも、『カートページからFAQを見に行き、戻ってきた上で購入』という流れをスムーズに生むことは困難です。ユーザー視点で考えると、購入直前の疑問や不安は、その場で解消できるように顧客体験を設計しなくてはなりません」(深田氏)
当事例では、カート画面内で「ご注文についてご不明な点はございますか?」といったポップアップを表示し、不明点がある場合はワンクリックで案内にたどり着けるようにした。その結果、購入完了改善率109%を記録している。
事例:ログインエラー時のイラつきを和らげる
ログインページでパスワードエラーなどが発生すると、離脱につながりやすい。多くのECサイトでは、ログインページにパスワードリマインダーへのリンクを控えめに記載しているが、それに気づかない、もしくはログインエラーで気分を害し、そのまま離脱してしまうといったユーザーも少なくない。
こうしたフリクションを解消する方法は、非常にシンプルだ。ログインエラーが発生した際に、ポップアップで「パスワードをお忘れの方はこちら」「メールアドレスをお忘れの方はこちら」と即時表示したところ、ログイン時の離脱が減少したと言う。当事例の購入完了改善率は120%となっている。