越境ECの顧客はコレクター?購買を後押しする提案を
まずは特集テーマに関連して、海外ユーザーからの期待について考える機会を持ってほしいと徳田さんは言う。
「越境ECの顧客を大きく分けると、そのジャンルについて詳しくない初心者と精通しているコレクターとに分類できます。ECサイト等でどちらの顧客にも同じ情報を提供することは、体験としても、購買の意思決定を促すことにおいても適したコミュニケーションとは言えません」
徳田さんが越境ECに取り組むクライアント企業のデータを分析したところ、初心者向けのエントリー商品が購入される割合が高いサイトが多いと言う。つまりそのジャンルについて詳しくない初心者の海外ユーザーが訪れ、買い物をしているわけだ。海外からさまざまな不便を乗り越え、日本のECサイトに伝統工芸品のような商品を購入しに来るのだから、コレクターとまでいかなくとも、強いこだわりを持っているユーザーと言えるのではないか。
「たとえば日本酒を扱っているとします。日本の事業者が運営するECサイトにたどりつき、購入を検討しているのであれば、日本酒そのものについては強い興味関心を持っていると言えるでしょう。しかしながら、商品カテゴリの中からどの銘柄や商品セットを選べばよいか、海外ユーザーが判断できるでしょうか。自分にとって最適なものを選ぶのは日本のユーザーでも難しく、購入していただけたとしても満足度が低ければ次につながりません。そこで、複数の銘柄が少量サイズでセットになっている、『飲み比べセット』のようなエントリーモデルがあれば、意思決定の後押しをしやすくなるわけです。このように、EC事業者側が想像している顧客像と、その顧客の満足度まで含めた求めるものが異なる場合、期待を超える体験を提供するのは難しくなります」
エントリーモデルとは別に、リピート用の商品も用意しておきたいと徳田さんは言う。商品そのものは大きく変えなくとも、変わり種や新商品とのセットにしたり、よりグレードの高い商品の提案を加えることで顧客の期待を超え、結果的に購買、リピートへとつながる工夫はできるのだ。